
「防災の日」の1日、大地震時の被害軽減に向けた訓練や催しが県内各地であった。足元から激しい揺れが襲う首都直下地震、大津波が押し寄せる南海トラフ巨大地震、その両方が重なる相模トラフ巨大地震-。懸念される多様なシナリオを念頭に、幅広い世代が備えの意識を新たにした。
直下地震の被害最小限に
首都圏の9都県市による合同防災訓練は、国の基幹的広域防災拠点となっている川崎市川崎区の東扇島を中央会場に実施。消防や警察、自衛隊、自主防災組織など約140機関から約8千人が参加し、切迫性が指摘される首都直下地震の被害を最小限に抑えようと連携を確かめた。
マグニチュード(M)7・3の直下地震を想定。臨海部のコンビナートでタンク火災が発生したとして、川崎市消防局などが大型化学高所放水車による消火に臨んだ。海上では、流出した可燃性の液体の拡散をオイルフェンスで防ぎ、海上保安庁や東京消防庁などの船舶が放水を続けた。

ビルが倒壊し、がれきの中から被災者を救出する訓練には、警察・消防隊員に救助犬も加わった。また、化学工場から塩素が漏れ出した想定で、消防や県警、陸上自衛隊が取り残された作業員を救出し、除染を行った。
川崎DMAT(災害派遣医療チーム)や日赤県支部、海上自衛隊横須賀衛生隊が連携した応急医療訓練では、けがの程度に応じ治療の順位付けをするトリアージを実施。市民参加による救援物資の受け入れやボランティアセンターの開設訓練も行われた。
終了後、福田紀彦川崎市長は「災害に強いまちをつくらなければならない」、安倍晋三首相は「災害への備えを確かなものにしていく」と述べた。

地域防災の担い手に 菅田中生徒が体験学習
横浜市神奈川区の市立菅田中学校は、恒例の「防災スクール」を同区の市民防災センターなどで行った。万一の事態に備え、生徒らが防災・減災への意識を高めた。
防災教育に力を入れる同校は2006年度から防災スクールを開催。地域防災の担い手となる人材の育成を目的に、区内の消防団員から知識や技術を学んでいる。
今年はメニューを一部変更。同校で避難訓練を実施後、1年生は同センターに移動して防災に関する知識を学習し、2、3年生はけが人の搬送や心肺蘇生法などの実践的な訓練を行った。

同センターでの学習に臨んだ1年生約150人は、地震シミュレーターで3次元の激しい揺れを体感したり、消火器を使った初期消火に取り組んだりしたほか、新聞紙を材料にした食器作りなど災害時に役立つ豆知識も身に付けた。
参加した1年生(12)は「災害時には自分の身を守ることも大切だが、周りの人を助けることも頭に入れながら行動したい」と話していた。

津波想定 電車から避難
横須賀駅構内で公募乗客1100人参加
JR横須賀線の列車を使い、乗客を津波から避難させる訓練が、横須賀駅構内(横須賀市東逸見町)で行われた。JR東日本横浜支社が公募した乗客約1100人が参加。停車した列車のドアから降り、線路上を歩いて移動した。
訓練は房総半島沖を震源に巨大地震が起き、最大3・7メートルの津波が押し寄せるとの想定で行われた。
同線の臨時列車を、緊急停止の無線を受信して駅間に停止した電車に見立て、同駅のホームがない場所に停車させた。乗客らは開いたドアから、はしごを使わずに1・2メートル下の線路上に次々と降りた。

子ども2人と参加した会社員(47)=横浜市戸塚区=は「通勤で電車を使うので、一度訓練しておくと、いざというときにも生かせる」と話した。

救助や復旧で連携 在日米軍や自衛隊も参加
大規模地震を想定した防災訓練が、座間市立ひばりが丘小学校(同市ひばりが丘)で開かれた。地元の消防や警察、事業者のほか、キャンプ座間(座間、相模原市)駐留の在日米陸軍や自衛隊なども参加。救助や復旧活動での連携を改めて確かめた。
訓練では、都心南部直下を震源とする巨大地震が発生。座間市内で最大震度6強を観測し、建物が倒壊して市民が取り残されたり、火災が起きたりしたとの想定で行われた。
救助訓練では、市消防本部が在日米陸軍や自衛隊などと協力し、家屋や中高層ビルに取り残された負傷者を救出、救護所に搬送した。
市消防本部が本年度に導入した小型無人機「ドローン」を使い、情報収集する訓練も初めて行われた。
遠藤三紀夫市長は「お互いに連携を取り、地域住民、座間市全体で対処していくことの確認ができた」と講評した。