
直下地震を起こす活断層は位置の特定に限界があるが、政府・地震調査委員会は一定の調査が済んだ断層について、将来的な地震の発生確率(長期評価)を公表している。身近なリスクに関する情報を自治体の防災対策や各家庭の備えに生かしてもらうためだ。しかし、実際には活断層の存在や危険性に関する情報は地域に浸透しておらず、活用もまた難しい。そうした課題があらためて浮き彫りになった4月の熊本地震を受け、新たに導入された活断層のランク分けという手法も、効果は未知数だ。
「活断層があることは分かっていたけれど、名前までは知らなかった。もっと小さな地震を起こすものだと思っていた」。熊本地震で震度7を2度観測した熊本県益城町。自宅が被災した30代の女性は、身を寄せた避難所でこぼした。
熊本地震では、主要活断層帯に位置付けられている「日奈久(ひなぐ)断層帯」と「布田川(ふたがわ)断層帯」が活動。地震調査委としては、あらかじめ危険性を指摘していた活断層で実際に地震が起きた形だが、地元では台風や噴火に対する意識の方が強く、住まいの耐震化など揺れへの備えには結び付いていなかった。
さらに、この二つの断層についての評価内容を専門的な観点から検証すれば、少なくない問題がある。
調査委が2002年に公表した内容では、日奈久、布田川の両断層帯を一連のものと捉えていたが、13年の見直しで別々の活断層と認定。両断層帯が一体となって活動する可能性も考慮していたものの、日奈久、布田川をそれぞれ3区間ずつに分けて地震の発生確率を算出していた。前震を起こした日奈久断層帯の高野-白旗区間は30年以内の発生確率が「不明」。本震の中心になった布田川断層帯の布田川区間は「ほぼ0~0・9%」だった。
相次ぐ反省
「大変心苦しいが、02年の評価の方が妥当だったのではないか」。地震翌月の5月、国内の科学者が集った千葉市での日本地球惑星科学連合大会。発表の中で反省を口にしたのは、