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「労働改善要求で雇い止め、無効」 川崎・市民ミュージアム元副館長が提訴

社会 | 神奈川新聞 | 2018年8月31日(金) 02:00

川崎市市民ミュージアム=川崎市中原区
川崎市市民ミュージアム=川崎市中原区

 川崎市市民ミュージアム(川崎市中原区)の指定管理者「アクティオ」(東京都目黒区)と有期雇用契約を結んでいた元副館長の浜崎好治さん(57)が、契約更新されずに雇い止めされたのは労働契約法に反して無効だとして、同社に従業員としての地位確認などを求める訴訟を30日、横浜地裁川崎支部に起こした。

 訴状などによると、浜崎さんは1988年の同館開館時から、当時同館を運営していた財団法人の職員として勤務。学芸員資格を取得し、2000年ごろに同館の学芸員になった。

 市は、民間活力を取り入れて同館の発信力を高めようと指定管理者制度を導入。16年に同社などの共同事業体を選定し、浜崎さんは17年4月に財団から同社に移り、1年間の有期契約で副館長職に就いていた。浜崎さんが、同社側に学芸員の賃金増や組合結成の必要性を訴えたところ、今年2月に契約更新しない旨を通告され、3月末で雇い止めになった。

 原告側は浜崎さんが労働条件の向上や組合結成の意向を示したために、同社から排除されたと主張。原告代理人の藤田温久弁護士は「副館長を務めていた浜崎さんは、同社の指定期間の5年間、契約更新を期待する合理的な理由があった」と述べた。

 同社は「訴状を見ていないのでコメントできない」とし、市市民文化局は「雇用関係は当事者間で解決されるべきものと認識しており、推移を見守る」とコメントした。

指定管理者移行で「学芸員の処遇悪化」


 「学芸員の専門性が顧みられていない。今回の提訴で私たちの置かれた状況を知ってもらいたい」。突然の雇い止めで川崎市市民ミュージアム副館長の職を失った浜崎好治さんは提訴後に会見。指定管理者制度に移行後、学芸員の処遇が悪化している実情を訴え、同館で活動する若手の学芸員の行く末を憂えた。
 


提訴後に会見する川崎市民ミュージアム元副館長の浜崎好治さん(中央)=川崎市役所
提訴後に会見する川崎市民ミュージアム元副館長の浜崎好治さん(中央)=川崎市役所

 同館の収蔵品は約20万点に上る。漫画や写真、映像資料の収集に力を入れており、浜崎さんは映像の専門学芸員だった。川崎市内に長く住み、「ウルトラマン」シリーズの監督として知られる実相寺昭雄氏の遺族から膨大な資料の寄贈を受け、分類整理を手掛けようと意気込む矢先の雇い止めだった。「専門外の学芸員に引き継がざるを得なかった。こうした事態が続けば、貴重な資料が死蔵してしまう」と危惧する。
 
 浜崎さんによると、同社が示した賃金条件は財団時代に比べて7割減となる内容。指定管理者制度の導入に伴い、同社に移った学芸員は16人中9人にとどまった。その後も離職は続き、本年度に入ってからは館長、学芸部門長も退職する異例の事態となった。
 
 学芸員として歩んできた自負を込めて浜崎さんは、「突然の雇い止めで頭が真っ白になった。このままでは若い学芸員のモチベーションは上がらない。寄贈者との信頼関係にも影響が出る。ミュージアムの質が確保できるか心配だ」。市民の「財産」である同館の機能低下につながることを憂慮している。

 
 
 

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