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平和つなぐ
広島被爆73年(5)「核は人の力で廃絶」 平岡元広島市長に聞く

社会 | 神奈川新聞 | 2018年8月24日(金) 10:10

平和への思いなどについて語る平岡敬元広島市長=5日、広島市南区
平和への思いなどについて語る平岡敬元広島市長=5日、広島市南区

 被爆73年を迎えた広島の人々らの思いを伝えてきた連載の最終回は、1991年の初当選から99年の引退までの2期8年、広島市長を務めた平岡敬氏(90)への共同インタビューの内容を紹介する。氏は、非核への思いを継承していくことの大切さ、「広島」と「ヒロシマ」との乖離(かいり)、米国に追従する日本が抱える矛盾などに熱弁を振るった。



 唯一の被爆国である日本が国際社会の中で果たす役割は大きいが、主導しているとは言い難い。2017年の国連で122カ国・地域の賛成により採択された核兵器禁止条約では、日本は交渉にすら出ていない。安倍晋三首相は今月6日、改めて不参加の立場を表明した。平岡氏は現状を憂う。

 「広島は世界平和や核兵器廃絶を訴え続けてきたが、実際はなかなか世の中を動かすに至っていない。ようやく核兵器禁止条約が昨年できたが、日本は不参加。日本は核の被害を受けたのだから、広島と長崎の体験を踏まえ、核をなくそうと先頭に立たないといけないのに立っていない。立たせる力が広島と長崎にもない」

 被爆国でありながら米国の「核の傘」に守られ、発展してきた日本。「ヒロシマ」と「広島」との間に日本の矛盾を見る。

 「『ヒロシマ』は平和、戦争反対、核反対とか抽象的な話。『広島』は例えば保育所が足りない、道路が必要とか現実政治の話。身近な話に対し、核のような見たこともなければ手に取ったこともないような話を(市民が)自分の中に取り込んで消化していくことは非常に難しい。絶えず分離している」

 「広島は保守系の都市。だが核兵器をなくそうと、社会をひっくり返すようなすごく革新的なことを言っている。本当にそれをやろうとするなら米国とぶつかるしかない。今の日本を支配しているのは日米安保条約であり、日米地位協定。これは広島だけの話ではないが、誰も米国とはぶつからない。ものすごく矛盾していることを平気でこなしてきた」


たくさんの人が集まる平和記念式典開始前の原爆慰霊碑周辺=6日、広島市中区
たくさんの人が集まる平和記念式典開始前の原爆慰霊碑周辺=6日、広島市中区

 市長時代に会った当時の首相、橋本龍太郎氏の沈黙を今も覚えている。

 「橋本氏が広島に来たとき、僕は平和宣言で核に頼らない安全保障を考えるべきだと言った。そうすると橋本氏は式が済んで歩いて行く中で『市長さんの気持ちでは分からないことだろうけど、そんなことはできっこないよ』『アメリカっていうのは怖いんだ』と言った。僕が『何が怖いんだ』と問うと彼は答えなかった。米国に根っこを押さえられているのを知っていたんだろう」

 2年前の16年5月には、当時米大統領のオバマ氏が広島を訪れた。平岡氏はその年の8月、訪問を問われて「オバマ熱」から目を覚ませと訴えた。

 「オバマ元大統領は謝るべきだった。演説の冒頭は『爆弾が空から降ってきた』というものだったが、そうではない。米国が落とし、原爆によって殺されたのだ。これだけ非人道的なことをやりながら謝らなくていいという精神構造は、日本が自分たちの戦争犯罪について謝らなくていいというのと全く通底していると思っている」

 米国にもの申すため、平岡氏はまず日本が加害に向き合うべきだと語る。

 
 

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