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活断層を知る(上) 位置特定には限界も

社会 | 神奈川新聞 | 2016年10月29日(土) 11:11

 鳥取県中部で震度6弱を観測した21日の地震は、4月の熊本地震と同様に内陸での「直下型」だった。地震の規模を示すマグニチュード(M)は6・6で、震度7を観測した熊本の前震(M6・5)とほぼ同じ。違うのは、活断層の存在が明らかになっていない場所で起きたという点だ。今回のようにM7級に満たない地震はどこで発生するかつかめておらず、これまでも各地に被害をもたらしてきた。その裏側に、なお全容や詳細を把握できていない活断層調査の限界がある。


鳥取県中部で震度6弱を観測した地震で破損し、屋根にブルーシートが掛けられた家屋=22日、同県倉吉市
鳥取県中部で震度6弱を観測した地震で破損し、屋根にブルーシートが掛けられた家屋=22日、同県倉吉市

見えぬ痕跡


 「地表に(断層が動いた)痕跡を残さずに、地震を起こす震源断層が活動した」。鳥取の地震を受けて22日に開かれた政府・地震調査委員会の臨時会合後、平田直委員長はこう述べた。調査委は、おおむね南北方向に延びる長さ10キロ程度の断層が地下で動いたと判断している。

 国土地理院も同日、地震に伴う地殻変動のデータを解析し、長さ約18キロ、幅約13キロの断層が左横ずれを起こした、との推定結果を公表。地殻変動研究室の矢来博司室長は「断層面はほぼ垂直で、その上端は地下約500メートル。このデータからだけでは断定できないが、地震の規模から考えても、地表に断層は現れていないのではないか」とみる。

 4月半ばの地震発生直後から、田んぼや道路に生じた食い違いや段差の映像が繰り返し報じられた熊本とは対照的な状況だ。熊本では「日奈久(ひなぐ)断層帯」や「布田川(ふたがわ)断層帯」といった活断層の名称がたびたび登場し、地震調査委もこれらが地震を起こしたと判断していた。


4月に起きた熊本地震で地表に出現した断層=熊本県益城町
4月に起きた熊本地震で地表に出現した断層=熊本県益城町

 これに対し、鳥取のように地表に痕跡を伴わない断層とは、どのようなものなのか。

 地下に動いた痕跡は存在するが、地表を覆う堆積層が厚かったりして肉眼では観察できない「伏在断層」と呼ばれる断層もあるが、構造地質学が専門の佐藤比呂志・東大地震研究所教授はこんな見方を示す。「伏在断層はある程度、(存在場所の)目星が付いている。今回はそれとも違う場所で起きたのではないか」

 さらに、こう強調する。「活断層が見つかっていない場所で強い地震が起きると(研究者が)批判もされるが、地震を起こしそうな断層が地下にどれほど潜んでいるかは十分に把握できていない。鳥取と同じような規模の地震についてあらかじめ発生場所を特定し、危険性を指摘するのは極めて困難だ」

 震源の深さや地盤の状況などによって一概に言えないが、おおむねM6・8未満の地震では地表に食い違いなどが現れにくいとされる。そうした断層活動の証拠がなければ、過去に繰り返し起きた地震の頻度やずれ動いた量などを詳しく調べることができず、将来も地震が起きる場所として警鐘を鳴らすことができなくなってしまう。ここに、活断層調査の一つの限界がある。

「未知」多く


 一方で、四つのプレート(岩板)が押し合っている日本列島では、至る所で地震を起こすエネルギー(ひずみ)が蓄積。東日本大震災を引き起こした東北沖の「日本海溝」や西日本を襲う巨大地震の発生が警戒される静岡沖以西の「南海トラフ」のようなプレート境界部では、地震の発生領域がある程度絞り込まれているが、内陸の直下型は位置の特定された活断層に限らず、これまでも警戒されていなかった場所で次々と起きてきた。それゆえ、対策を呼び掛ける国や研究者は「強い揺れを伴う地震はいつ、どこでも起こる可能性がある」と繰り返す以外にないのが実情だ。

 活断層の存在と直下型の恐ろしさを世間に知らしめた1995年の阪神大震災(M7・3)から21年。当時、淡路島で直上の住宅などに段差やずれを生じさせた野島断層は有名だが、佐藤教授は指摘する。「野島断層は動いた活断層の一部にすぎない。激しい揺れに見舞われた神戸では活断層は地表に現れていない」

 その後相次いだ直下型でも、2000年の鳥取県西部地震(M7・3)や07年の能登半島地震(M6・9)、08年の岩手・宮城内陸地震(M7・2)などでは、対応する明確な活断層は確認されなかった。04年の新潟県中越地震(M6・8)は、活断層で起きたかどうか今も見解が分かれている。

 こうした阪神以降の活断層を巡る状況について、佐藤教授は「光と影がある」と指摘する。「注目され、危険性が認識

 
 

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