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弱視の子の学び支えて 手書き教科書「拡大写本」35周年

社会 | 神奈川新聞 | 2020年5月10日(日) 14:00

製作した拡大教科書を掲げる「ルーペの会」の奥野会長(右)と横山さん=川崎市高津区
製作した拡大教科書を掲げる「ルーペの会」の奥野会長(右)と横山さん=川崎市高津区

 弱視の子どものために文字や挿絵を読みやすい大きさにした「拡大写本」を製作する川崎のボランティア団体が、創立35周年を迎えた。一人一人の見え方に合わせて作る拡大教科書は、全国の小中学校から依頼が舞い込むほど。パソコンの導入で作業が効率化した今も手書きの味わいを大切に、子どもの学びを支えている。

 誰もが不自由なく本を読める世の中になってほしいと、1985年から活動を続ける「ルーペの会」(川崎市高津区)。地元の主婦を中心とした約30人の会員が週に1度集まって製本作業にいそしむ。新型コロナウイルスの影響で4月から集まれなくなったが、おのおのが自宅で活動を続ける。

 活動当初は一般書籍を中心に手掛けていたが、弱視の子どもたちに平等に学ぶ機会を届けたいと97年から教科書の製作にも着手。全てオーダーメードで、文字の大きさ、行間、挿絵の位置、見えづらい色はないかなど、保護者や教員に何度も聞き取りを重ねていく。年間20人ほどから依頼があったこともあり、県内はもちろん、北海道から沖縄まで全国に及んでいる。

 「単純に教科書を拡大コピーすればいいわけではない」と会長の奥野信子さん(70)。基になる教科書のレイアウトを大きく崩さないようにしつつ、子どもが学びやすい形を模索する。奥野さんは「どうしたら満足してもらえるのか子どもの目線になって考え続けながら作っている」と話す。

 現在は小学生2人と中学生1人の教科書の製作が大詰めを迎えている。小学生は音楽と図工、中学生は国語の教科書を手掛ける。国語は他教科と比べて文字数が膨大なため、最終的には分冊によって通常の1冊が40冊にもなるという。

 2008年から教科書会社も拡大教科書の発行の努力義務が課せられたため、ボランティアへの依頼は減少傾向にある。それでも副会長の横山サチ子さん(67)は「出版社の作った教科書には文字の大きさに限界があり、まだまだ私たちを必要としてくれている子どもは多い」と活動の意義を強調する。

 拡大教科書の作成はパソコンでもできるようになったが、「印刷されたものより手書きの方が、目に負担がかからなくて読みやすいという声もある」(奥野さん)と、手書き文字にこだわる。「拡大教科書を使って卒業できました」─。子どもから届く感謝の手紙はメンバー全員の宝物だ。

 ウイルス禍で臨時休校が長引き、本年度の拡大教科書はまだ子どもたちの手に渡っていない。先行きは見通せないが、一文字一文字に込める思いは変わらない。奥野さんは「いつ学校が再開してもいいように頑張っている。助けを求めている子どもたちに少しでも手を差し伸べられたら」と決意を新たにした。

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