
江戸時代の噴火後、約300年にわたり沈黙を続ける富士山(山梨、静岡県)は「いつ噴火してもおかしくない」といわれている。だが、過去の噴火形態は多様で、次のシナリオは正確に読めない。こうした現状や噴火に関する新たな知見を避難対策に反映させようと、山梨、静岡、神奈川の3県などは7月から、ハザードマップ(災害予測地図)の改定に乗りだした。
直近だった1707年の宝永噴火は16日間継続し、江戸を含む南関東一円に大量の火山灰を積もらせた。864年に始まった貞観噴火も大規模で、溶岩流によって精進湖と西湖が形成された。両噴火の間にも、噴火がたびたび発生している。
近年では、東日本大震災4日後の2011年3月15日に富士山南部でマグニチュード(M)6・4の地震が発生。巨大地震が噴火を誘発する可能性も取り沙汰されたが、これまで大きな異変もなく推移している。
こうした状況変化などがある一方で、現在のハザードマップは震災以前の04年に作製。当初想定された範囲の外側にも火口が存在することが判明し、貞観噴火の溶岩流噴出量が見直されるなどの研究成果も出てきたため、2年後の完成を目標とする今回の改定作業に反映させることにした。
3県などでつくる富士山火山防災対策協議会が7月に設置した検討委員会(委員長・藤井敏嗣山梨県富士山科学研究所長)の議論は始まったばかりだが、改定マップでは居住地域への影響が拡大する可能性が指摘されている。
ただ、溶岩流や火砕流、噴石などの直接的な被害が予想されるのは山梨、静岡両県で、神奈川は宝永タイプによる降灰が現実になった場合に影響が大きい。今回の改定作業で降灰は対象になっておらず、国が今後検討する見通しだ。