新型コロナウイルスの感染拡大による緊急事態宣言で、経済活動や市民生活が大きく制約される中、ことしの憲法記念日を迎えた。外出、営業の自粛や休校など、かつて経験したことがない状況の中、憲法について落ち着いて考える余裕が社会から失われている。改めていま、言論法やジャーナリズムに詳しい専修大の山田健太教授に、非常事態の中での憲法について聞いた。

─非常事態の中で憲法記念日を迎える。
「学生には『今年は憲法を考えるとてもいいタイミング』と伝えている。例年に比べてより憲法を学ぶ、あるいは再確認するチャンスだと。なぜかと言えば、通常であれば図書館で本を読んだり、映画館で映画を見たりすることは、全くストレスなく当たり前のようにできた。だが今はできない。よく考えれば移動の自由や、表現の自由、集会の自由といった憲法上の基本的な人権、しかも今まで意識的に感じていなかった空気のような権利、自由がなくなっているのだ。そういう状況でもう一度、自由や権利の大切さ、ありがたさを再確認するタイミングだと思っている」
─社会をみれば、国民自身がかえって制約を求めたり、自粛要請に従わない市民をたたくような息苦しい空気が広がっている。
「緊急事態宣言が出される状況で、世の中が一つにまとまる方向に進んでいる。とりわけ政府、自治体の要請という『事実上の命令』のようなものに異論を唱えたり、違う行動をする人たちを社会の敵とみなしてバッシングすることが続く。たとえば、たたかれるのはパチンコに行く人、あるいは行楽地に行く観光客として表れている。公的な機関が一つの方向性を示し、その方向性に異論を唱えたり、違う行動をする人が敵視され、排除されるのだ」
─なぜそうした空気が生じているか。