
新型コロナウイルスの感染拡大による外出自粛が続く中、不安や孤独、ストレスからアルコールの過剰摂取による依存症の深刻化が懸念されている。依存者の回復を支援する専門家は自宅での酒量増加に注意を呼び掛けるとともに、アルコールやギャンブル依存者などへの支援活動を縮小せざるを得ない現状に危機感を募らせる。
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「自宅で飲むと飲酒時間が長くなり、結果的に酒量も増えてしまう。回復を目指している人たちの『コロナスリップ』はあり得る」
アルコール依存症の回復支援に長年取り組むNPO法人市民の会寿アルク(横浜市中区)事務局長の三浦保之さん(74)は、依存者の増加や症状の悪化に警鐘を鳴らす。
スリップとは、依存症からの回復を目指す人が再び酒などに手を出してしまうこと。孤立し、家計や仕事、日々の生活などで不安やストレスを抱えることで、杯が進み、次第に抑制がきかなくなる。三浦さんは、飲酒問題が家族への暴力(DV=ドメスティックバイオレンス)の背景に潜むとも指摘する。
アルコール依存症の患者数は全国で推定100万人超とされるが、自らが依存症であることを自覚して治療を受ける人はごくわずか。三浦さんは「飲酒問題の自覚が乏しく治療を受けていない人が、さらに酒量を増やしている可能性がある。今こそ依存症対策の強化が欠かせない」と訴える。