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やまゆり園事件2年
悲しみの中で支えられた 亡き息子の体験を歌声に

社会 | 神奈川新聞 | 2018年8月3日(金) 15:17

笑顔で対面する女声合唱団「きらきら湘南」の細木さん(左)と新田さん=藤沢市民会館
笑顔で対面する女声合唱団「きらきら湘南」の細木さん(左)と新田さん=藤沢市民会館

 支えられて生きている。その当然を、ともすれば人は忘れてしまう。新田和久さん(66)=東京都=はしかし、相次ぐ家族の死に直面し、出会いや支えが前に進む希望になるとかみしめている。自らも支える側に-。恩返しの思いを胸に活動を続ける。

 銀波がまばゆい海岸を横目に、江ノ電がガタンガタンとリズミカルに駆けていく-。そんな情景と調和する軽快な調べに乗せて、美しいハーモニーが会場を包んだ。

 7月22日、藤沢市民会館で開催された「ふじさわ合唱祭」。新田さんは地元で活動する女声合唱団「きらきら湘南」に招待され、メンバー約40人が舞台から届ける歌声に聞き入った。曲と歌詞のモチーフは、早世した愛息にまつわるエピソードだ。


1998年11月、江ノ電の運転席に立つ新田朋宏さん(和久さん提供)
1998年11月、江ノ電の運転席に立つ新田朋宏さん(和久さん提供)

 1998年11月、拡張型心筋症の長男朋宏さん=享年(16)=が亡くなる4日前だった。主治医や患者支援団体の働き掛けで、朋宏さんは「タンコロ」の愛称で知られる江ノ電の108号車を検車区内で特別に運転させてもらった。江ノ電側は当日のダイヤも変更して協力。朋宏さんは16年に及ぶ闘病生活の最後に夢をかなえ、電車の運転士となった。

 昨年5月、合唱団を主宰する細木佳子さん(54)は江ノ島駅に展示された当時の写真を見掛けた。駅員からエピソードを聞き、「多くの人が協力していたことに感動した」。もともと、音楽を通じて闘病中の子どもや家族に勇気や希望を届けようと活動。「すぐにメロディーが浮かんだ」といい、「僕と江ノ電~輝く夢を乗せて~」を作詞・作曲した。

 夢はきっと きっと叶うから 負けないで 今 進め 前へ

 新田さんは「元気な曲で息子のイメージにぴったり。気持ちを代弁してくれた」と感謝する。


「夢は叶う」というメッセージを込めて歌った女声合唱団「きらきら湘南」=藤沢市民会館
「夢は叶う」というメッセージを込めて歌った女声合唱団「きらきら湘南」=藤沢市民会館

 91年に同じ病気で妻裕子さん=享年(36)=も失った。励ましの言葉を送ってくれる人たちとの出会いに感謝し、「家内や息子が縁を与えてくれているのかな。次々とつながっていくのがうれしい」。

 朋宏さんの入院先で22年間、患者支援に携わる。2年前からは技術者としてのキャリアを生かし、地域の「発明クラブ」で子どもたちにもの作りの楽しさを伝える。入院生活を送っていた朋宏さんの成長を間近に見ることができなかっただけに、失った時間を取り戻すように駆け回る。

 朋宏さんが生前在籍していた特別支援学校での経験も活動に生きる。

 当時、言葉をうまく発することができない障害児と出会い、「どう認識されているのか分からず、話しにくさを感じていた」。しかし顔見知りになった頃、学校見学を終えて帰宅しようとすると「もう帰るの?」と声を掛けてくれた。「私のことを見ていてくれていた。壁をつくっていたのは自分の方だった」と気付かされた。いま、「勇気を持って、一歩踏み込んで相手のことを理解しよう」と心掛ける。

 活動は月に数回。支援とか社会貢献とか、そんな大それた意識はない。「支えられてきたから恩返しがしたくて。ただ目の前の人が喜んでくれるだけでいい」

 僕の思い みんなの愛 重なりあえば奇跡になる

 新田さんは朋宏さんの面影を追いながら、合唱に耳を傾けた。

 「支えられている分の1パーセントでも、人のために行動できればいい。その連鎖で世の中は良くなる気がするんですよね」

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