新型コロナウイルス感染防止対策として政府による全世帯への布マスク配布が始まる中、住居を持たない路上生活者にもマスクを届けようと三浦市在住の美容師兼俵伸枝さん(82)がマスクを手作りしている。「(路上生活者は)マスクがないのではと思った。感染して命に関わっては」とミシンを動かし、約100枚を横浜市内の支援団体に送った。
横浜市金沢区で美容室を経営している兼俵さん。十数年前までは、集めた古着や古靴などを路上生活者や生活困窮者の支援団体「寿支援者交流会」(同市中区)を通じて送るボランティア活動を行っていた。
三浦市に転居後、その活動は休止していたが、感染拡大やマスク全戸配布の報道を目にし、「寿町の路上生活者にマスクは届くのだろうか。居ても立ってもいられなくなった」という。
早速マスク作りに取り掛かった。型紙を作り、家にあった生地や浴衣を加工した。ゴムが品薄だったため、女性用ストッキングを切って代用するなどし、約100枚を作った。
マスクを受け取った同交流会の高沢幸男事務局長(49)は「生活が困窮している人に政府のマスクは届かない。気に掛けてくれている人がいることは本当にうれしい」と兼俵さんの心意気に感謝。すでに路上生活者らに配っており、「とても好評。喜んで受け取ってくれている」と話す。
「困っている人を黙って見ていられない。そういう性分だから」と笑顔の兼俵さん。今後は横須賀市内の養護施設の子どもたちにも届けるつもりだ。