ベトナムやタイで脳血管の治療を指導し、現地の医師らと交流を深めている医師がいる。横浜市立脳卒中・神経脊椎センター(同市磯子区)の血管内治療センター長、中居康展さん(51)。業務の傍ら定期的に現地に通い、難しい症例を治療しながら医師らの技術向上に寄与している。向上心が高い現地の医師らと親しく触れ合いながら、制約が多い中で行う医療活動は、自身も得るものが多いという。中居さんは「日本の若い医師が同様の環境でもまれる経験をできる道がつくれれば」と話している。
中居さんは2012年4月、ベトナムでの活動を始めた。当時、講師をしていた筑波大医学医療系で学んでいたベトナムからの留学生に誘われたことがきっかけだ。訪れたのは、留学生が放射線科の医師として所属していたホーチミン市のチョーライ病院。1700床で、ベトナム南部最大の施設だという。
同病院はベトナム保健省の直轄病院でもあり、脳外科の手術件数は年間で約9千件を数える。800床の筑波大付属病院の場合、年間に行われる同様の手術は昨年、約700件。「非常に症例が多い。始めは治療について講演し、実際に手術も行った」。以後、毎年のようにベトナムを訪れ、同病院で活動を続けている。
現地での手術は日本と異なり、スピードが求められる。医療に関わる施設や人員がまだ少ないベトナムでは、多いときには1日5件の手術をこなすことも。日本では多くても1日3件ほどであることを考えれば、時間的余裕はない。