松本智津夫死刑囚=教祖名麻原彰晃=の刑が執行されたことが分かった。教団に一家で殺害された坂本堤弁護士の同僚は今年1月、教団幹部の死刑執行が現実味を帯びた際にこう語っていた。
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教団幹部の死刑執行が現実味を帯びることで、教団に一家で殺害された坂本堤弁護士の同僚からは「再発防止や事案解明の手掛かりを失う」として、執行回避を求める声が上がった。
「刑執行へ次のステップに入るだろう」。坂本弁護士と信者の脱会支援に取り組み、今もオウム真理教被害対策弁護団事務局長を務める弁護士=神奈川県弁護士会=は厳しい口調でこう語る。
「家族の会」とともに、松本智津夫死刑囚を除く元信者12人の死刑囚の刑執行回避を求め、これまで1万筆以上の署名を集めてきた。12人に事件の責任がないとか、重い刑に値しないと考えているわけではない。ただ、「教団のマインドコントロールを受けたという意味で、彼らも被害者という側面がある」と説明する。
また、事件に至る過程を十分に解明してこそ、必要な対策を施すことができると考えるが、国は事件の総括をしていないと指摘。「当時何があったのか、何が問題だったのかをきちんと語れるのは、事件に深く関わった死刑囚の12人。執行されれば、それが二度とできなくなる」と訴える。
教団が形や名前を変えて存続し、地域によっては信者を増やしていることに危機感を持つ。「若い人には事件の実感がない。改めてオウム真理教とは何だったのか、見つめ直すためにも、12人には自分の言葉で語ってほしい」。今後も署名活動を続けていくという。