
小田原市内の自然環境の保全と経済的な自立を両立できるかというテーマに、産官学の3者が取り組んでいる。今月には市担当課や市民団体、企業、大学の関係者が一堂に会し、意見交換会を開催。獣害対策として出資者を募り、農業体験の特典などを付与する制度の創設が提案されるなど、さまざまなアイデアが報告された。
小田原に残る自然を守ろうと、市内の環境団体などで2016年に設立された横断的な組織「おだわら環境志民ネットワーク」(辻村百樹会長)による事業の一環。環境省のモデル事業の一つとして同年度に始まり、市民や行政、大学などが共同研究者となって同ネットワークが持続的に活動できる方策を考えている。
18年度は、3カ年の事業の最終年度。1日夜に市内で開かれた意見交換会には同ネットワークの会員や市環境政策課、慶応大、星槎大、東京工大、東京都市大、東京農工大、文教大の研究者や学生のグループが参加し、考案した事業計画を報告し合った。
各大学のアイデアは多彩だ。慶応大は、イノシシを捕獲する際に「わなオーナー制度」の創設を提案した。出資者に見返りとしてミカン狩りなどの収穫体験などを提供する仕組み。18年度はイノシシの個体数の推定や、制度の試行を目標としている。
星槎大は同ネットワーク内に自然環境を認証する委員会を設置し、認証による収入を人材育成に役立てる構想を発表。東工大は砂浜や入り江がほとんどない海岸線の現状を指摘した。若年層が海で生物観察できる試みを始めようと、県立小田原高校の生物部と連携、事業を展開していく目標を定めた。
このほか、東京都市大は放置竹林を利用した事業、東京農工大は耕作放棄地を太陽光発電に生かす取り組み、文教大は「20代をターゲットにしたエコツアー」を発表。各グループが活発に意見交換した。