県内のタクシー会社などで設立された「県乗用自動車厚生年金基金」(横浜市中区)が、解散時に全加入者らに分配される残余財産約11億7千万円を不正に隠し、分配金の支払いを拒んでいるとして、タクシー運転手として勤務する男性加入者4人が8日、同基金に計約197万円の分配金の支払いを求める訴訟を横浜地裁に起こした。他の加入者も追随する動きがあり、原告側は今後、数十人規模での追加提訴も検討する方針。
同基金の会計処理を調査してきた原告側は、多額の使途不明金があると主張。「背任や業務上横領容疑などでの刑事告訴も視野に、今回の訴訟を進めていきたい」としている。
訴えによると、財政状況が悪化した同基金は2016年11月に国の特例制度を活用した解散が認可され、現在清算手続きが行われている。債務弁済後の残余財産は、加入年数などに応じて全加入者らに分配される仕組みになっているが、同基金側は残余財産がないと説明。加入者らへの分配を行わなかった。
説明を不審に思った原告らは同基金が国に提出した資料の開示請求を行い、帳簿類を精査。約18億円の使途不明金が判明したとし、債務を差し引いた約11億7千万円が全加入者らに分配される残余財産に当たると主張している。
同基金は県タクシー協会を母体に1968年に設立され、タクシー会社32社などが加入している。同基金は「訴状を見ていないのでコメントできない」としている。