
川崎臨海部や東京都心を通過する羽田空港の新たな飛行ルートの運用が計画通りに29日、始まった。新型コロナウイルスの影響で国際線を中心に欠航が相次ぎ、新ルート直下の住民から運用開始の延期を求める声が上がる中で決行された。初日は川崎上空や都心を飛ぶことはなかったものの、新ルートに反対する川崎市川崎区の市民団体は地元を練り歩き、改めて騒音被害や石油コンビナート上空を飛ぶ危険性を訴えた。
機影下の川崎(上)騒音 「園児 散歩行けない」
機影下の川崎(下)落下物 制限撤廃「説明ない」
「ものすごい騒音と振動でとても恐ろしかった」「コンビナートに落下物が落ちたらどうするのか」「国に対し一緒に反対の声を上げていきましょう」─。
新ルートの飛行地域にある同区殿町地区。地元住民でつくる「羽田増便による低空飛行に反対する『川崎区民の会』」のメンバーが街を歩き、市民に呼び掛けた。週末の外出自粛の要請により、参加者は10人ほど。人通りもまばらだったが、声を上げずにはいられなかった。
川崎上空を飛ぶルートは、南風が吹いた場合の午後3~7時に使用。B滑走路から離陸し、住宅地や石油コンビナート上空を高度約300メートルで低空飛行するため、「騒音や落下物の不安が拭えない」と、かねて住民の反対の声が根強い。
国土交通省は2月に新ルートを実際に飛行する「実機飛行確認」を7日間実施。都内を中心に19カ所で騒音を測定し、約2割で想定した騒音を上回った。殿町地区は想定を1~3デシベルほど下回ったが、全測定地点で最も高い最大94デシベルを記録。94デシベルは電車のガード下とほぼ同等の音量という。
同省によると、運用初日の29日は北風が吹いたため、川崎上空や都心を飛ぶことはなかった。また、ターミナルビル運営会社のホームページによると、同日の羽田発着の国際線は当初予定の8割が欠航となった。
同団体代表世話人の橘孝さん(70)は「こんな状況で新ルートの運用を始めるのはあまりにも強引。国は市民の声を聞く耳を持っていない」と語気を強めた。