戦後の高度経済成長をけん引した川崎市臨海部の石油コンビナート地域。羽田空港の新たな飛行ルートは、巨大工場群の上空に何便もの旅客機が飛来する事態をもたらす。
「50年間も飛んでいなかった場所に飛んでくる。けれども、国は万が一を全く考えていない」
同市川崎区の住民でつくる「羽田増便による低空飛行に反対する『川崎区民の会』」代表世話人の橘孝さん(70)は、そう語気を強めて続ける。
「落下物も含め航空機事故が起きたらどうするのか。工場で働く人や近隣住民に逃げ場はない。市民を犠牲にしてはいけないよ」
1960年代後半に航空機事故が相次いだことなどから、国土交通省は70年、当時の金刺不二太郎市長の要請を受け、原則として石油コンビナート地域の上空を避けるよう通知した。
しかし昨年12月、同省は「航空需要や社会情勢の変化」として通知を廃止。