箱根町は5日、2017年の入り込み観光客数が3年ぶりに2千万人を突破した、と発表した。箱根山・大涌谷周辺の火山活動が活発して以降、初の大台回復。大型宿泊施設オープンが相次ぎ、過去最高を更新した外国人観光客数も後押しした。
山口昇士町長は「国際観光地・箱根の復活を印象付ける結果。官民と地域が一体となり、“オール箱根”態勢で、観光経済のさらなる拡大・発展に努めていきたい」とコメントした。
17年の入り込み観光客数は、前年比10%増の約2152万人。内訳は、宿泊客が約469万4千人(前年比8・2%増)、日帰り客が約1682万6千人(同10・5%増)。月別では、3、5、8、11月に200万人を超えた。大型宿泊施設が新たに4軒オープンしたこともあり、最高を記録した1991年の約2247万4千人に迫る数字となった。
また、外国人観光客は約54万6千人(同18%増)で、13年から5年連続で過去最高を更新。町は、オーストラリアやベトナムを中心に海外での誘致活動が奏功し、全国の観光地と同様、箱根でも訪日外国人客(インバウンド)が増えたと分析する。
一方で、「ハイシーズンに観光客がこれ以上増えても、渋滞悪化など、マイナスイメージが強まってしまう」とし、町は1、2、6、12月の閑散期に誘導し、観光客数を平準化することを検討している。
修学旅行なお足遠く
訪日客、富裕層に転換
箱根町の入り込み観光客数が3年ぶりに2千万人を超えた。箱根山・大涌谷周辺の火山活動の活発化による影響を完全に脱した一方で、修学旅行客の足は遠のいたままだ。将来のリピーターになり得る児童、生徒は大切な経営資源だが、好転を待てない宿泊施設のターゲットは訪日外国人や富裕層らに向く。関係者からは「もう元には戻らないかもしれない」との声も上がっている。
「3万人の予約が突然、キャンセルになった。影響が大きいどころでなく、よく営業を続けられたというぐらい」。修学旅行客や学生旅行客を多く受け入れてきた町のある旅館業者はこう振り返る。
宿泊客はほぼ元の水準にまで戻ったが、小学生の修学旅行客の宿泊数でみると、2017年度は火山活動が活発化した前年の14年度の半分ほど。「学校の規模も小さくなり、戻りきるのは難しい」とみる。
修学旅行の誘致などを進めている「箱根学生旅館連盟」によると、箱根を訪れる修学旅行客は小学生がほとんど。昭和40年代は年間70万人以上が訪れていたという。
以降は、大型テーマパークの開設などに伴う修学旅行の形態変化や、少子化によって徐々に減少。町の調査によると、箱根山の噴火警戒レベルが上がった15年は4925人と前年の4万5753人から激減。16年は2万人台に回復したが、17年は大口の受け入れ先の改修が影響し、再び8416人までに落ち込んだ。
修学旅行は1、2年前から予約を取ることが多く、行き先に一度変更があると2、3年は影響が残るとみられる。同連盟によると、「むげにしたくないが、選ばれなくなったから」と修学旅行の受け入れをやめた事業者も出ている。老朽化などによる改修に合わせて仕様を高級化するなど施設自体も変化。同連盟に加盟する旅館・ホテルも1954年設立時の41から、今年1月現在で7にまで減り、同連盟の担当者は「旅館側はいつまでも待っていられない。インバウンド(訪日外国人旅行者)が活況になり、切り替えのタイミングになったのでは」と推測する。
小田原、箱根、真鶴、湯河原の1市3町の行政などでつくる「西さがみ教育旅行誘致推進協議会」は、将来の誘客につながる修学旅行を重要視し、「訪れる小学生が多ければ多いほど良い。増やしていきたい」と話している。