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時代の正体〈607〉ヘイト集会問題(上)疑問、懸念映す意見書

社会 | 神奈川新聞 | 2018年6月2日(土) 06:00

福田市長宛てに送られた意見書
福田市長宛てに送られた意見書

【時代の正体取材班=石橋 学】川崎市のヘイトスピーチ対策の阻止を公言する人種差別扇動家、瀬戸弘幸氏が市教育文化会館(川崎区)で計画している講演会の開催が3日に迫る。市は公的施設でのヘイトスピーチを防ぐためのガイドラインに照らし、会館使用を不許可にする要件に当たらないとの判断を変えていない。この間、学識者から福田紀彦市長宛てに届けられた意見書には市の判断への驚きと重大な懸念がつづられている。

 〈川崎市が制定したガイドラインはヘイトスピーチ解消法の規定を受け、地方公共団体がヘイトスピーチの解消に向けて地域の実情に応じた施策を取った先駆的な取り組みとして高く評価されます。貴市のこのような取り組みに、心より敬意を表するものです〉

 そう書き出すのは青山学院大の申(シン)ヘボン教授。国際人権法学会理事長を務める理知的な筆は「しかるに」と続き、5月16日に福田市長が表明した、瀬戸氏らの過去の言動がヘイトスピーチに当たらないとする市の見解に首をかしげる。

 〈この団体が過去に主催した集会では、例えば昨年12月10日、講演者の一人は指紋押捺(おうなつ)制度について、「朝鮮人というのは大変犯罪率が高いですから、指紋を取っておくのは大変意味があった」「多摩川河川敷の不法占拠は全員朝鮮人」など、特定の民族や国籍に属する集団を一律に犯罪者扱いする発言を公の場で行っています〉

 〈主催者である瀬戸弘幸氏は「川崎市は必ずしもすべて在日に屈しているわけではない」「自民党から公明党から全部が在日さまさま」など、在日朝鮮人があたかも川崎市や政党を支配しているかのような発言をし、特定の民族に対する人種的憎悪の思想を表明しています〉

 〈これらはいずれも、人種差別撤廃条約4条において日本が根絶のための「迅速かつ積極的な措置をとる」ことを約束している人種差別思想の流布、および、ヘイトスピーチ解消法の定める不当な差別的言動にあたります〉

 結びは重い警句でつづられた。

 〈不適切な判断によってこのような集会が許可されてしまえば、公的施設において同様の発言が繰り返され、ネット配信で拡散され差別が扇動されるおそれが現実にきわめて高いのみならず、人種差別団体はこれを奇貨として差別の扇動をますます活発に繰り広げるでしょう〉

手本まで示す


 やはり、瀬戸氏らの言動がヘイトに当たるとの具体的な解釈や条約と解消法上の義務を示した上で、アドバイスを送っているのは師岡康子弁護士。ガイドライン策定を提言した市人権施策推進協議会の部会にも参考人として招かれた、この問題の第一人者。ヘイトスピーチを規制するカナダの人権法のガイドラインを「ご参考までに」と示す。

 ガイドラインにある(a)ターゲット集団が社会の主要な組織を支配して他者の生存や安全などを奪う強力な敵として描かれている(b)信憑(しんぴょう)性の高そうな実話や報道などを用いることでターゲット集団をネガティブに一般化している(c)ターゲット集団が子どもや年配者、弱者につけ込むものとして描かれている-といった11類型を列挙。多摩川で起きた中学生殺害事件に言及した、一見ヘイトスピーチとは判別しづらい瀬戸氏の発言を「(b)に該当します」と、判断の「手本」を示してみせた。

 有識者で作る第三者機関を招集すべきとの意見がだから説得力を持つ。

 〈最終的な判断は、「死ね」「ゴキブリ」など用語がそのまま解消法2条の定義そのものの場合を除いては、専門的知見に基づく総合的な検討が重要です〉

 〈特に川崎市のガイドラインは発足したばかりで、研修なども行き届いておらず、現場での運用のためのガイドラインや事例集などができていない状態で、誰もが適切な判断ができる条件はまったく整っていないといわざるをえません。当面、柔軟に運用し、専門家からなる第三者機関であるヘイトスピーチ部会による審査を積極的に求めるべきだと考えます〉

 ガイドライン上はまず市が「不許可」の判断をした上で招集する仕組みになっているが、念押しも忘れない。

 〈それ以外の場合に第三者機関への意見聴取をすることを禁止する規定はありません〉

 ヘイトスピーチが行われる恐れは在日コリアンの当事者や市民、学識者から具体的に指摘されている。被害を防ぐ手だてとしてガイドラインもある。それでもなお市が判断を変えなければ-。

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