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関東学院大・小山嚴也副学長
<日大アメフット悪質反則>運動部の構造的な問題

社会 | 神奈川新聞 | 2018年6月1日(金) 14:06

大学スポーツの意義や今後の在り方などを語る関東学院大・小山副学長=横浜市金沢区
大学スポーツの意義や今後の在り方などを語る関東学院大・小山副学長=横浜市金沢区

 日本大アメリカンフットボール部の守備選手による悪質な反則問題は、歴史的に大学とは別の自治組織であるが故に管理できない体育会の特殊性を浮かび上がらせた。10年前のラグビー部の不祥事を教訓に、学生スポーツ改革に取り組む関東学院大の小山嚴也(よしなり)副学長(経営学部教授)は「大学のコントロールが利かなかったという点で、うちの事件も同じ。多くの大学に共通する運動部の構造的な問題にメスを入れる必要がある」と自戒を込めて指摘する。

■「個人商店化」


 大学の看板を背負って選手強化に努め、プロや五輪代表らトップアスリートを輩出する。体育会が日本のスポーツ界に果たしてきた役割は大きいが、そもそも学生の課外活動のための自治組織として存在する。小山氏はそこに今回の問題の出発点を見る。

 「指導者が実績を上げて長く続ければ、やがて『個人商店化』していくこともある。人事やお金の流れも含めて大学が制御できない状況で、組織が極端に振れてしまった」

 日大の内田正人前監督はコーチ時代を含めて指導歴40年を誇る大学アメフット界の重鎮。悪質なタックルを指示したとされ、23日の謝罪会見に同席した井上奨前コーチは恩師をかばうような歯切れの悪い回答に終始した。選手も声明文で「監督やコーチに頼りきりになり、その指示に盲目的に従ってきてしまった」との思いを吐露している。

 「体育会系的な組織は、どちらかというと力で押さえ込む傾向が強い。試合に出たい選手にとって監督は絶対的な存在だし、コーチ陣もイエスマンみたいな人が集りかねない」

 部内だけでなく、試合を運営する側にも伝統校や有力指導者への配慮が感じられた。最も悪質だった1度目のタックルについて、審判が下したのは15ヤードの罰退のみ。後に追加処分を科した関東学生連盟も、当初は内田前監督を厳重注意にとどめていた。

 「恐らく日大の監督で、相当権力のある人ということで、ボランティアベースの審判には強く言えないところがあったんだなという気がします」

■変化する気質


 問題のプレーは動画投稿サイトなどを通じ、爆発的に拡散し、クオーターバックを負傷させられた関西学院大側は謝罪や原因究明などを求めて抗議文を送付する事態となった。だが、日大上層部はあくまでも自治組織である体育会の問題として切り離すような姿勢を見せていた。小山氏は、タックルをした選手の記者会見が流れを変えたとみる。

 「昔だったら理屈抜きに取りあえず服従だったけれど、被害者ならばともかく、タックルした側が会見する時代。明らかに選手の気質が変わっている」

 今回の問題を巡っては、父母会が弁護士をつけて選手の声明文発表を段取りするなど、保護者はバックアップに尽力した。小山氏は、一昔前の大学運動部ではあり得なかった動きだとする。

 「一番変わったのは親。例えば、少年野球からものすごく一生懸命に関わりますよね。その延長線上で、今は大学の合宿も見にくる。少子化とも絡んでいるのか、子どもに思いを託す親が多い」

■不祥事を糧に


 関東学院大では、2007年11月にラグビー部員2人が寮となっていたマンションで大麻を栽培したとして現行犯逮捕され、その後、執行猶予付きの有罪判決を受けた事件があった。大麻が部内の複数人に広がっていた実態も明るみに出て、当時の監督は引責辞任。半年間の活動自粛に追い込まれた。

 グラウンド内で起きた日大の問題と、当時の事件とでは性質は異なるものの、小山氏は大学が運動部を制御できなかったという意味では共通するとの見解を持っている。

 「ラグビー部の肥大化を大学としてコントロールできていなかった。部員は200人になり、寮もどんどん借りていく。後で分かったことだが、大学が把握していない物件もあった」

 大学選手権を6度制したラグビー部の扱いは別格だった。天然芝のグラウンドをはじめとする練習環境は突出していた。ただ、過度な優遇が事件を招いた一因との指摘に対し、小山氏はあくまでも大学のチェック機能の欠如が問題の根幹にあったと振り返る。

 「10年連続で決勝に行き、しかも早稲田と戦っている。それは教職員や卒業生にとってはうれしいし、誇りだった。少なくとも結果を出しているからあまりマイナスな部分は見えてこない」

 反省を踏まえ、関東学院大は09年、学長をトップとするスポーツ振興委員会を発足。以降の改革により、強化指定した運動部を大学の組織に組み入れた上で、「特別強化」「強化」「準強化」のカテゴリーに分けて整理した。慣例でOB会などが主導権を握ってきた指導者の人事や、事実上ノータッチだった金の流れをチェックする仕組みも構築したという。

 「これまでは強化クラブも何となく指定していた。戦略的に強化するというのは、大学にとって意味のあるクラブにすること」

■問われる意義


 「大学スポーツの闇が浮かび上がった」「アメフット存亡の危機だ」-。日大の問題を巡っては、所管するスポーツ庁の鈴木大地長官が辛辣(しんらつ)なメッセージを発信し続けた。同庁は18年度中をめどに、全米大学体育協会(NCAA)の取り組みに倣い、大学運動部に在籍する学生の学業支援や大学スポーツのブランド化などを図る「日本版NCAA」の導入を目指している。

 小山氏も広く世間に大学の体育会の在り方を問い直す契機と捉え、その意義にパブリシティー(宣伝)効果、ロイヤルティー(愛着)、そして教育の3点を挙げる。

 「大学の知名度が上がることは悪くない。OBや現役学生、教職員がそれを象徴として一体化できる。ただ、入試とは直結しない。ラグビー部が日本一になっても受験生は増えていない」

 とりわけ力を入れるのが教育面だ。関東学院大の全学部生約1万900人のうち、強化指定の12の運動部に所属するのは約800人。小山氏は「24時間365日、選手と向き合っている指導陣の努力もきちっと評価したい」とし、こう続ける。

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