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〈時代の正体〉「匿名でも刑事責任を」ヘイト投稿で書類送検

社会 | 神奈川新聞 | 2018年5月25日(金) 08:17

記者会見する崔さん(右から2人目)と代理人弁護団=東京・霞が関の司法記者クラブ
記者会見する崔さん(右から2人目)と代理人弁護団=東京・霞が関の司法記者クラブ

【時代の正体取材班=石橋 学】ヘイトスピーチの根絶を訴える川崎市川崎区の在日コリアン3世、崔(チェ)江以子(カンイヂャ)さん(44)をツイッターの投稿で脅迫したとして、川崎署は24日までに藤沢市の男性(50)を脅迫容疑で書類送検した。代理人弁護団によると、ヘイトスピーチ解消法施行後、匿名のヘイトスピーチ投稿者を特定して同容疑で書類送検したのは初めて。都内で会見した崔さんは「長い間ネットで攻撃され、生きるのを諦めたくなる瞬間もあった」と声を詰まらせながら、思いを振り絞った。

 アカウント名は「極東のこだま」。その執拗(しつよう)なツイートは1年半で数百件に上った。

 「私が死ななかったのは、死ねなかったのは、家族の苦痛を増やすわけにいかなかったから」

 崔さんはかみしめるように続けた。

 「脅せば黙る。生きることを諦めさせられる。差別への批判を封じ込める。そんな成功体験を許すわけにいかなかった」

 始まりは2016年1月、わが街桜本を襲ったヘイトデモへの抗議集会。スピーチに立った中学生の長男のことが報道されると、名指しの攻撃が口火を切った。

 〈最近俄然クローズアップされてる崔だか姜だか江以なんちゃらか知らんが、桜本の在日連中が拉致事件と関係ないツラして暮らしていることが許せない〉

 以降、ヘイトの被害を訴え、ニュースで報じられれば、決まってツイートがなされた。

 〈朝鮮の泣き女なんぞにやられてたまるかよ。チェカンイジャ〉

 見知らぬ相手の異様な執着に震え、一方的にエスカレートしていくさまに息をのんだ。

 〈これでも我慢してきたつもりなんだけど、色々とさすがに限界。レイシストとしてひとつ上のステージに上がるのでヨロシク〉

 〈ちょいと近所まで買い物に。チェカンイジャとすれ違わないかな♪〉

 〈ナタを買ってくる予定。川崎のレイシストが刃物を買うから通報するように〉

 近くに住んでいるとにおわせ、殺害予告まで行う。常軌を逸した投稿に表札を外し、地元の警察署に依頼した巡回パトロールは41回を数えた。

 朝、新聞を取りにポストを開け、警察が訪れたことを知らせるカードに非日常が日常になったと思い知らされる。職場には「朝鮮に帰れ!」と叫ぶ匿名電話がかかってきて、頭部が切断されたゴキブリの死骸が封書で届いたこともあった。

 「こだま」本人か、あるいはツイートに触れ、あおられた人物か。

 「ネットの書き込みが現実に転換するのでは、と恐れていた」

 いつ誰に襲われるとも知れず、近所で子どもたちとは他人のふりをするのが家族の決まり事になった。離れて歩き、バスでも別々の席に座る。交差点で思わず手を振った小学生の次男は「しまった」という顔をして、家に戻るなり「ごめんなさい」と謝った。

 「ヘイトスピーチってどこまでもついてくるんだね」

 すっかり習慣付いた次男はインフルエンザで高熱を出したときでさえ、病院から一人で歩きだした。

 「こんな母親ならいない方がましと、消えたくなった」

 耳の聞こえが悪くなり、じんましんが出て、眠れなくなった。

 投稿が頻繁になる週末、ゴールデンウイーク、夏休み、年末年始が怖くなった。大みそかの恒例、家族みんなでの銭湯行きを諦めた直後、目にしたツイートが忘れられない。

 〈おれが見えないのか すぐそばに住んでいるのに~♪〉

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