
新型コロナウイルスの感染防止のため幼稚園などに備蓄のマスクを配布しているさいたま市が、埼玉朝鮮初中級学校(同市大宮区)の付属幼稚園を配布対象から除外した問題で、学校関係者らは18日、市に差別政策の再発防止を求める要請を行った。面会した市幹部は「差別の意図はなかった」と抗弁。市の判断によって当事者が傷つき、差別が拡大したとの指摘にも行政としての責任を認めず、謝罪もしなかった。
マスクの配布を巡って市は「数が確保できた」として朝鮮学校も対象に含むよう方針を転換し、同日、朝鮮学校・幼稚園に計110枚を配布した。鄭勇銖(チョン・ヨンス)校長は感謝を伝えた上で「子どもたちを平等に見てほしいだけ。同じような線引きは繰り返さないという考えを示してほしい」と訴えた。
これに対し、市子ども未来局の金子博志局長は「朝鮮学校を除外する意思決定はしていない」との説明を繰り返し、再発の防止は明言しなかった。
市民団体「誰もが共に生きる埼玉県を目指し、埼玉朝鮮学校への補助金支給を求める有志の会」共同代表の渡辺雅之・大東文化大教授は、市が朝鮮学校を対象外とした理由に転売を含む不正の可能性を根拠もなく持ち込んだこと自体が在日コリアンをさげすむ差別であり、さらなるヘイトスピーチを助長したと指摘。「説明の仕方が誤解を招いたとしたら謝罪する」「個人的な見解だが、差別があってはならない」と述べるにとどまった金子局長に対し、市の説明自体がヘイトスピーチであると認め、インターネット上のヘイト書き込みや同校に対して脅迫電話という形で誘発されている差別を許さないという声明を公式見解として出すよう求めた。