
「文化芸術は金食い虫じゃない。経済活動のベースに必要なのだと理解を得られるようになった」。4月、横浜市の林文子市長は都内で開かれた投資家向け説明会で強調した。
裏付けとするのは、近年の来街者数や観光消費額の伸びだ。2017年の市内の観光集客実人員数は3631万人と5年前の1・46倍、観光消費額は3557億円と1・85倍に増加した。市文化観光局は「イベントを中心に集客できている」と分析する。
人口370万人を超える日本最大の基礎自治体も、推計では19年をピークに人口減時代に入る見通しだ。働き盛りの30代以降で転出超過が続いている上、昼夜間人口比率も市外への通勤・通学者が市内への流入人口を上回っている。社会増の維持や企業誘致の推進、観光やMICE(国際会議の総称)などによる交流人口の拡大なしに街の活力低下は避けられない。
「力強い経済成長と文化芸術創造都市の実現」。策定中の新たな中期計画(18~21年度)で掲げる六つの戦略の先頭にそう掲げるのも、人口減に対する危機感の表れだ。
人口減が必至の中、戦略的に人を呼び込むイメージを描く。浜銀総合研究所の新瀧健一氏は「今は働き方改革も含めて転換期。芸術文化のまちづくりは時宜を得ている」と指摘する。
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「横浜は地域性と文化性を結び付けられる街」。文化芸術のまちづくりを進める上で、横浜の利点を強調するのは、横浜美術館(同市西区)の逢坂恵理子館長だ。