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【減災新聞】火口観光、ガス注意 規制3年の大涌谷 「高感受性者」今も禁止

社会 | 神奈川新聞 | 2018年5月7日(月) 02:00

火山ガスの危険性を視覚的に伝える案内表示。外国語の表記もある=箱根ロープウェイ大涌谷駅
火山ガスの危険性を視覚的に伝える案内表示。外国語の表記もある=箱根ロープウェイ大涌谷駅

 県内唯一の活火山・箱根山(箱根町)は3年前に活発化した火山活動の影響が収まらず、大涌谷の一部エリアで立ち入り規制が続いている。噴火警戒レベルは最低の1(活火山であることに留意)のままだが、火口や噴気孔などから噴き出す蒸気の勢いは弱まらず、火山ガスの濃度も安全なレベルにまでは低下していない。規制解除エリアで新たな名物となった火口見学は人気を呼んでいるものの、ぜんそく患者らは大涌谷園地への立ち入りが禁じられている。

 箱根山では、2015年4月26日に火山性地震が急増。5月6日に噴火警戒レベルが初めて2(火口周辺規制)に引き上げられた。以来3年が経過し、警戒レベルが下がった今も、気象庁は「大涌谷の火口域では噴気や火山ガスに注意を」との呼び掛けを継続している。

 特に注意を要するのは、ぜんそくや呼吸器疾患、心臓疾患などがある「高感受性者」。火山ガスを吸い込むと、ぜんそくの発作が起きたり、せき込んだりするリスクがあるからだ。

 箱根町は園地に立ち入らないよう求めており、ウェブサイトなどで注意喚起。箱根ロープウェイも、乗車を控えてもらうため、外国語も含めた案内を強化している。

 園地ではさらに、検知されたガスの濃度に応じた規制基準が運用されており、避難指示などを放送で呼び掛ける場合も。ガスの濃度が高く危険な場合は、ロープウェイの運行も休止される。

 こうしたガス対策のモデルとなった熊本県の阿蘇山では1997年11月、火口観光に訪れていた男性2人が高濃度の二酸化硫黄(SO2)=自助のヒント参照=が原因で死亡。このうち50代の男性はぜんそくのため酸素吸入器を使っており、60代の男性は肺気腫だったと報告されている。

 大涌谷でも、SO2の影響が懸念されている。観測史上初だった15年6月の噴火以前は硫化水素(H2S)が主に観測されていたが、新たに形成された火口や噴気孔などからはSO2も放出されるようになり、規制基準の注意喚起レベルに達することがあるからだ。

 県環境科学センターなどが2016年1~12月に行った調査では、ガスの濃度は数カ月周期で上昇と低下を繰り返しており、長期的な低下傾向を示してはいなかった。風速2~6メートルのときに園地内の濃度が高くなる傾向も確認されたという。

 大涌谷の規制エリアと周辺の噴気地帯で火山ガスの定点観測を続ける東海大の大場武教授も「風向きによっては、ガスの影響でせき込むことがある。安全対策は欠かせない」との認識を示す。

警戒レベル課題なお


 5段階の噴火警戒レベルは気象庁が火山活動の状況や変化を捉えて運用し、個々の火山の特徴に応じた避難対応を地元自治体などが決めている。

 気象庁は噴火が起きると社会的な影響が大きい全国50の活火山を24時間態勢で監視。このうち、住民の避難計画がまとめられた39火山(箱根山含む)で警戒レベルを運用している。

 火山性地震が増えて山体が膨らむ地殻変動が観測されたり、噴気が活発になったりすると、レベルを引き上げ、警戒や避難などを促す。しかし、特段の兆候がないまま噴火に至り、発生後にレベルを上げるケースも少なくない。

 死者・不明者63人と戦後最悪の火山災害となった2014年9月の御嶽山(長野、岐阜県)噴火は、一時的に増えた火山性地震が減少後に発生、レベルのあり方に大きな課題を残した。今年1月に突発的な噴火で死傷者が出た草津白根山(群馬県)も当時はレベル1だった。レベルが段階的に上がるとは限らないことにも注意が必要だ。 

自助のヒント 二酸化硫黄(SO2)


 火山ガスの一種で、「亜硫酸ガス」とも呼ばれる。2~3ppmで刺激臭があり、10~20ppmになるとせき込んだり、涙が出たりする。500ppm前後で死に至るが、ぜんそく患者は0.2ppmでも発作を起こし、危険になるという。火山地帯や温泉地で「硫黄の臭い」などと表現される卵の腐卵臭のような臭いは硫化水素(H2S)が原因で、SO2とは異なるとされる。火山ガスは谷間や窪地などにたまりやすく、風の弱いときなどは拡散しないため、要注意という。


火山の噴火警戒レベル
火山の噴火警戒レベル


■箱根山の火山活動を巡る主な経過
【2015年】
4月26日 箱根山で地震活動が活発
5月 4日 大涌谷の自然研究路などを閉鎖
   6日 噴火警戒レベル2に引き上げ
      大涌谷園地と周辺で立ち入り規制、箱根ロープウェイが運休
6月29日 大涌谷でごく小規模な噴火
  30日 噴火警戒レベル3に引き上げ
8月26日 大規模噴火などを想定した避難計画策定
9月11日 噴火警戒レベル2に引き下げ
11月20日 噴火警戒レベル1に引き下げ

【2016年】
2月22日 改正活火山法に基づく火山災害警戒地域に指定
3月 9日 改正活火山法に基づく箱根山火山防災協議会が初会合
4月15日 大涌谷の避難誘導マニュアルに火山ガス対処要領を追加
7月26日 大涌谷園地が一部再開、箱根ロープウェイ全線運行

【2017年】
5月 2日 箱根山北側の金時山付近で一時的に地震が増加
6月14日 気象庁が箱根山の噴火警戒レベルの判定基準公表

【2018年】
2月15日 ガス濃度上昇時の箱根ロープウェイの運行停止基準見直し
3月    大涌谷の規制エリアでシェルター設置工事が開始

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