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盗難被害で善意の車いす 横浜の女性に全国から募金

社会 | 神奈川新聞 | 2018年4月30日(月) 12:21

「幸せ色の黄色の車椅子ですね」とほほえむ宍戸さん=横浜市港北区
「幸せ色の黄色の車椅子ですね」とほほえむ宍戸さん=横浜市港北区

 半年前に車いすの盗難被害に遭った宍戸かつ子さん(62)=横浜市泉区=に、会員制交流サイト(SNS)で被害を知った全国の人から約40万円の募金が集まり、今月、新しい車いすが贈られた。障害者向けの観光情報を発信する鎌倉市内のNPO法人で活動する宍戸さんにとって車いすは「自分の可能性を広げてくれる大切な足」。一人一人の善意に感謝し、被害後から断念していた観光地のバリアフリー調査を再開するつもりだ。

 宍戸さんはポリオ(小児まひ)で、20年前から車いすが手放せなくなった。現在はNPO法人湘南バリアフリーツアーセンター(鎌倉市雪ノ下)理事で、湘南地域の宿泊施設や江ノ島電鉄全15駅のトイレ、券売機の使い心地などを調査。車いすに乗る観光客へのアドバイスにつなげている。

 活動は幅広い。「障害を理由にやりたいことを諦めないでほしい」と、着物を着て鎌倉を巡るツアーを企画。初詣や花見を楽しみ、長野から往復5時間かけて参加した車いすの女性もいた。「誰もが当たり前に、挑戦を楽しめる社会になってほしい」。そんな思いを胸に駆け回る日々は、盗難事件を境に一変した。

 昨年10月。横浜市内の病院を出ると、入り口に止めた車いすがなくなっていた。短距離なら足を引きずって歩けるため、「狭い病院内で邪魔にならないように」と気遣い、置いていたものだった。

 ラメ入りのオレンジ色で、自身の身体に合わせ注文した「世界に一つの車いす」。被害に遭いやむなくかつて使っていた車いすに乗ったが安定感がなく、難なく下れた坂も怖くなった。やりがいを感じていた観光地調査も断念した。

 「私の生活の足を返してください」。車いすの写真や盗まれた場所をつづり、フェイスブックに投稿。一晩で1500件シェアされるなど多くの人に読まれた。しかし、中には心ない書き込みも。「外に車いすを置く方がおかしい」「派手な色だから持って行かれるんだ」。傷つき、自分を責めた日もあった。

 見ず知らずの人や友人たちが支えになった。

 普段働く障害者スポーツ文化センター横浜ラポール(横浜市港北区)利用者や友人、面識のない人も捜してくれた。インターネット上で小額募金を呼び掛けてくれた会ったこともない男性は「自分だって、いつも多くの人に助けられて生きている。助け合うことは普通です」とメッセージをくれた。感謝と申し訳なさでいっぱいだった心に響いた。

 贈られたのは盗まれた車いすと同じ型。「嫌なことを忘れられる明るい色に」との友人の言葉で選んだ黄色だ。「見ず知らずの人たちにも、一人一人の顔を見て御礼が言いたい」と宍戸さんは感謝する。

 今、願うのは再発防止だ。「車いすは行きたい所に行き、やりたいことを楽しむ可能性を広げてくれるもの。こんな悲しい思いをする人は、もう二度と出てほしくない」。今後は新しい足とともに、「車いすの防犯情報発信や、湘南の観光地のバリアフリー調査へ行きたい」と思っている。

 
 

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