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南北会談へ在日1世の願い 平和への転機に期待

社会 | 神奈川新聞 | 2018年4月27日(金) 02:00

ひ孫の写真を手に思いを語る徐さん=川崎市川崎区の川崎協同病院
ひ孫の写真を手に思いを語る徐さん=川崎市川崎区の川崎協同病院

 10年半ぶりとなる南北首脳会談が27日、開かれる。拉致問題解決の分水嶺となるか、朝鮮半島の非核化は実現するか、民族の分断の歴史に終止符を打つ契機となるか-。県内関係者は日本の姿勢や会談後も見据えながら、その行方を注視する。

在日1世 終わらぬ戦後、祈る安息


 「みんなが平和になりますように」。在日コリアン1世の徐(ソ)類順(ユスン)さん(91)=川崎市川崎区=はまだ見ぬ安息の訪れを南北首脳会談に願う。「私は戦争、戦争ばっかりだったから」

 日本の植民地支配で困窮を極めた朝鮮半島に生まれた。14歳で日本へ渡り、軍需工場や銀山で働いた。敗戦で解放を迎えるも安息は訪れなかった。故郷へ戻ると朝鮮戦争が勃発。幼子を背負い、砲火を逃げ回った。再び海を渡ったのは「生きるため。でも、学校に通えなかったから字が読めず、いい仕事はなかった」。働きづめの人生に差別はついて回った。

 迎えた老後。「子や孫たちに同じ苦労をしてほしくない」。1世のハルモニ(おばあさん)たちと戦争反対を訴え、川崎区桜本をデモ行進したのは2015年9月。海外での戦争に道を開く安全保障関連法の成立が迫っていた。安倍政権が喧伝(けんでん)したのが朝鮮半島危機だった。2カ月後、まちをヘイトデモが襲った。「朝鮮人をたたき出せ」「半島へ帰れ」。痛む足で抗議行動に参加した。「なぜ今更そんなことを言われなければならないのか」。在日コリアンの終わらぬ戦後に胸をえぐられた。

 南北会談後には米朝首脳会談が控える。「みんなが仲良くなれば、日本も仲良くなる。ひどいことを言う人たちもいなくなる」

 酷使してきた体中の痛みが激しくなり、病床に伏す日々。「いいニュースを楽しみにしている」。目元がそっくりなひ孫の写真を枕元から引き寄せ、見詰めた。「父親は日本人で、国籍も日本だけれど、この子にも朝鮮半島の血が流れているのだから」

拉致家族ら 「時間かけられない」


 「両親が元気なうちに解決できなければ意味がない。これから2年、3年がたてば解決ではなく、もう消滅」。北朝鮮に拉致された横田めぐみさん=失踪当時(13)=の父滋さん(85)と母早紀江さん(82)のマンション住民らでつくる支援団体「あさがおの会」代表、田島忠さん(76)=川崎市川崎区=は語気を強める。

 昨春、滋さんと花見をしながらマンション近くを歩いた。会話はできたが「最近はもう言葉がうまく出せない状態。昨秋ごろから急激に悪化したと感じる」。

 今月に入り滋さんは体調を崩して入院し、何度か見舞いに足を運んだ。「いつまで意識が持つか、めぐみさんを覚えていられるか分からない。ただ、どんな状態であっても滋さんがめぐみさんと再会する姿を見ることは、早紀江さんの大きな喜びになるはず」

 あさがおの会は国内外で写真展などを開催し、15年にわたり横田さん夫妻をそばで支えてきた。「早紀江さんの顔にも疲れがにじんでいる。時間はもうかけられない」。昨年には早期解決を強く訴える手紙をしたため、安倍晋三首相らに送った。

 韓国にも多くの拉致被害者がいるとされる。「南北会談で議論の俎上(そじょう)に載ることは日本にとってもマイナスにはならないと思うが、韓国側の動きを待っている余裕はない。大きなチャンスがきている今こそ、日本として行動を起こすべきだ」

被爆者 「歴史的一歩」を歓迎


 県原爆被災者の会副会長の福島富子さん(73)=葉山町=は「北朝鮮の発表が本当かどうか信じ難いが、核の放棄に向かって進むなら歓迎したい」と前向きに受け止める。

 生後7カ月の時に長崎で被爆。当時の記憶はまったくないが、昨年12月に国際NGO「核兵器廃絶国際キャンペーン」(ICAN)のノーベル平和賞授賞式を現地で見守り、核廃絶への思いをさらに強くした。

 日本が批准していない核兵器禁止条約に触れ、「国の方針を変えるのはどこでも難しいが、一人一人が声を上げることで核廃絶につながると信じたい」と願った。

 「朝鮮半島の非核化と平和構築に向けた歴史的な一歩であり、かつてない大きなチャンスだ」。そう語るのは、平和問題に取り組むNPO法人「ピースデポ」特別顧問の梅林宏道さん(80)=横浜市港北区。

 北朝鮮が核実験の中止などを表明したことについて「米国と交渉入りするための最初のカード。相手がどう反応するかを図る計測バルーンだ」と指摘。米国による敵視政策が撤回され、体制の安全が保証されることが前提とはいえ、「北朝鮮は全面的な核放棄まで考えているだろう」と分析する。

 日本と韓国、北朝鮮を非核兵器地帯とし、核兵器保有国の米国、中国、ロシアが地域の安全を支える「北東アジア非核兵器地帯」実現の必要性をあらためて強調。「非核化交渉に一足飛びの解決はない。今こそ、日本政府の積極的な関与が求められている」

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