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素直な思い最優先に 面会交流は今(3)同居親

社会 | 神奈川新聞 | 2018年4月2日(月) 09:13

「(面会交流が)子どもにとっての良い思い出になれば」と語る同居親の女性会社員=横浜市内
「(面会交流が)子どもにとっての良い思い出になれば」と語る同居親の女性会社員=横浜市内

 2月下旬、一足早く春が訪れたかのような暖かい週末だった。家族連れやカップルでにぎわう横浜市内の駅近く。県内の女性会社員(38)が長男と長女を迎える。商業施設のベンチに座った子どもたちの手には、袋いっぱいに詰まったお菓子がのぞく。

 「俺も(ゲームセンターで)景品(のお菓子)取れたよ」「私はチョコレート取ったよ!」

 兄妹は離れて暮らす父親との月に1回の面会交流を終え、女性へうれしそうに言葉を重ねる。女性は優しいまなざしを向け、「すごいじゃん! 良かったね」。女の子は女性の手をぎゅっと握り、その隣を男の子が肩を並べ、帰り道を歩く。

 面会を重ねて半年ほど。今でこそ少しずつ安定してきたが、女性は元夫との離婚直後を振り返る。「面会交流や養育費のこと、今後のことを落ち着いて話す余裕なんてなかった。最初、子どもたちには絶対に会わせたくなかった」

 女性は6年前、当時6歳の長男と1歳の長女を連れて家を出て、夫と離婚した。貯金を勝手に使った夫と口論となり、腹部を蹴られたことが大きなきっかけだった。長男も、その暴力を見ていた。

 引っ越し、パート探し、転校…。母子ともに生活も心も不安定になった。宅配便のチャイムが鳴ると、元夫ではないかと怖くて出られなかった。「あの時、怖かったね。ママ、パパに靴も投げられてたよね」。長男は夜中に突然起き、そうこぼすようになった。心に負った傷の深さを感じた。

 そんな日々を送り1年ほどが過ぎたある日、元夫から突然「子どもに会いたい」と調停を申し立てられた。「会わせられる状況ではない」と拒絶したが、第三者を利用した月1回の実施で渋々合意した。

 初めは後ろ向きだった。ただ、支援団体に支えられ実践していく中で気持ちは徐々に変わってきた。「私は今も相手を全く信頼できない。でも、子どもたちが(父親に)会いたいんだと伝わってくるから、私の思いは切り離そうと思えた」

 1年ぶりの父親との再会の日。「怖い」。兄妹は面会前、不安げに母にくっついた。しかし回数を重ね、支援者の女性も一緒にたこ焼きを作って食べたり、商業施設で遊んだりするうちに「楽しかった」「いっぱいおいしいもの食べたよ」と笑顔で帰ってくるように。今までは父親の話題を口にしなかったが、「次はパパとテーマパークに行きたい」と子どもたちから自然に言うようになった。

 正直に言えば女性にとって、「元夫と関わることはストレス」だ。ただ、不安は支援者が受け止めてくれる。支援者の存在は面会時の安心につながっている。

 兄妹の前で元夫を悪く言うことはせず、「次はどこ行きたい?」と問いかける。子どもの気持ちを大切にしたいと思えるようになったからだ。

 今だからこそ女性は思う。「子どもにはたくさんつらい思いをさせてしまった。父親を『恐怖の塊』と思い続けるのもつらいこと。だからこれからは(父親のことを)良い思い出にしてあげたい。子どもにとって楽しい時間を過ごせるなら、それで良いかな」

 面会交流は、改正民法で離婚時の取り決め事項とされたが、信頼不足や環境の変化などを背景に二の足を踏む親は多い。2016年の厚生労働省調査では、母子家庭で面会の取り決めをしているのは2割強。8割弱は取り決めておらず、その理由は「相手と関わり合いたくない」が最多だった。面会の実現は容易ではない。

 しかし、自身と子どもの思いを切り分けて考え、わが子を思い面会を見守る親たちもいる。

 「パパと会いたい」「次はいつ会える?」。40代の女性会社員の長女は、屈託のない笑顔で伝えてくる。会えない時は手紙を書き、月1回の父親との面会を心待ちにしている。

 何より大切にすべきは子どもの思いだと感じる。「大人だけで勝手に決めないで」。ある時、長女がそう声を荒らげたことがあった。面会交流の調停中、今後について「パパとママ、裁判所の人、みんなで決めるね」と伝えた時だった。

 娘の叫びに気付かされた。「私は離婚の選択をしたけれど、娘には娘の意思がある。自分の思いを自分で大事にできる人になってほしいし、私もそうしてあげたい」

 そのためにも女性が心を配るのは、子どもが思いを素直に打ち明けられる環境だ。

 元夫は明るくユーモアがあり、笑わせることが好きな一方、怒ると大声を上げる人。「パパ怒るから、思ってること言えない」。一緒に暮らしていたころ、長女がそうぼやいたことがあった。「思ってることは言っていいんだよ。パパは大好きだから怒るんだよ」。そう伝えても「できないよ」とこぼしていた。

 人知れず親の顔色をうかがっていた長女は、女性のことも気遣った。「パパの話すると、ママが具合悪くなっちゃうかも」。離婚後、習い事の先生から長女が漏らした言葉を伝え聞いた。元夫と同居中、女性はストレスからか体調を崩しがちだった。子どもはよく親のことを見て、気を使ってしまうのだと気付かされた。

 それからは女性も変わった。「パパにお手紙書いたら?」。そう聞くと「良いの?」。驚いたように声を弾ませ、長女から父親の話をするようになった。

 ともに暮らす親は子どもの言葉に日々接する。子どもの言うことをかなえるだけが子育てではないからこそ、何が子どものためになるのかを模索する。たとえば、長女が元夫を大好きで、面会を楽しんでいるのはよく分かる。ただ、元夫の面会頻度を増やしたいとの主張には、娘の生活のペースを思えば首を縦に振れない。

 それでも子どもの思いを聞き、取り入れようという姿勢で向き合うことが、子どもを尊重する第一歩と感じている。

 女性にとって面会交流は「どんな親子でありたいか、子ども自身で考える機会」。この先、思春期を迎えれば、面会の頻度をどうしたいか考えが変わるかもしれない。「1人でため込まず、思ったことを伝えられる環境を整えること」を大切にしながら、ずっと見守りたいと思う。

 それは家族に限らない。あの時、娘が習い事の先生にこぼしたように、親には言えない気持ちもあると思う。

 「相談できる人が周囲に多くいると良い。話したいと思える人が一人でもいることが、きっと子どもにとって大切です」

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