【時代の正体取材班=石橋 学】公園や市民館などの公的施設におけるヘイトスピーチを未然に防ぐため川崎市は31日、施設の貸し出しに関するガイドラインの運用を始める。ヘイトスピーチ解消法が禁止規定のない理念法にとどまる中、ヘイトスピーチを制度的に事前規制する全国初の行政施策として、その運用に注目が集まる。
重大な人権侵害を生じさせ、地域社会を分断する差別的言動は「許されない」とし、根絶に向けた施策を求める解消法に基づく。施設の利用申請者の情報発信や言動、活動歴などから、へイトスピーチが行われる恐れが「客観的な事実に照らして具体的に認められる場合」に警告、条件付き許可、不許可、許可取り消しの措置を取ることができる。
恣意(しい)的な判断や正当な表現行為の規制を避けるため、有識者らでつくる第三者機関を設け、意見聴取する仕組みを取り入れた。不許可、許可取り消しの措置が必要と判断した場合、第三者機関を招集。判断の妥当性について専門的見地から意見を受け、各施設が最終的な決定を行う。
判断に迷う場合も第三者機関の意見を求めることができ、審議結果は個人情報を除いて公開する。ガイドライン策定に当たった市人権男女共同参画室は「第三者機関の審議を通して事例を積み上げることで基準がより明確になっていく。各施設には疑わしいケースを含め積極的な対応が求められる」と話す。
第三者機関は市長の付属機関である市人権施策推進協議会の部会として設置。4月1日の同協議会で委員を選出する。