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記者の視点=デジタル編集委員・石橋学
時代の正体〈585〉「私たちをなめんなよ」森友文書改ざん官邸前デモ

社会 | 神奈川新聞 | 2018年3月22日(木) 13:09

首相官邸に向かいプラカードを突きつける人たち=16日午後10時ごろ
首相官邸に向かいプラカードを突きつける人たち=16日午後10時ごろ

【時代の正体取材班=石橋 学】〈なめんなよ〉

 体の芯で情動が脈打つのが分かった。16日金曜夜、首相官邸前。しの突く雨に打たれながら、シュプレヒコールが響く最前線で私は震えていた。

 「佐川じゃなくて麻生が辞めろ!」

 「安倍は辞めろ!」

 「総辞職!」

 そして「官僚頑張れ!」がひときわ強く響く。

 主催者の「抗議を始めた4日前と比べて2倍、3倍の人が集まっています」というアナウンスに勇気づけられる自分に少し驚く。

侮辱されたのは誰か


 季節が逆戻りしたような寒さに、実は心が折れそうになっていた。警察官の規制で歩道の端へ追いやられ、身動きが取れない。両足のふくらはぎから全身が硬直していく。足踏みしてみるも効果なし。ならば腹の底から声を出せばと、シュプレヒコールに加わってみるが、声は次第にかすれていく。

 でも、誰一人その場を離れなかった。傘を手に、雨がっぱを着込み、一人また一人と列に加わってくる。

 とどまり続けること3時間半。「怒り」の二文字では言い尽くせない感情の発露として数千の人々が集い、声を上げていたのだと知った。

 存在を示すために-。

 そう、森友学園への国有地売却に関する決裁文書改ざんの問題によって冒涜(ぼうとく)されているのは、公平公正な民主主義にとどまらない。あざ笑われ、見下されているのは、この国に住まう一人一人、つまり私やあなた。

 それが証拠に、麻生太郎副総理兼財務相は佐川宣寿前国税庁長官を報道陣の前で、国会の場で「佐川、佐川」と呼び捨てにしてみせた。官僚は時の政権の召使いではない。憲法が定めるように、全体の奉仕者、主権者たる国民の使用人として国民に奉仕し、国民全体の利益のために尽くすべき存在だ。問題の中心人物とはいえ、公僕がいたずらに侮辱されている。それは使用人たる私たちが侮辱され、存在が無視されているのと同じだ。

 その傲岸(ごうがん)不遜こそが文書改ざんへの政治の関与を疑わせるに十分だ。

「敵」を仕立てる政治


 週が明けた19日の集中審議では、質問に立った自民党の和田政宗参院議員が続いた。標的とされたのは佐川氏の後任、現理財局長。

 「太田理財局長は民主党政権時代の野田総理の秘書官を務めており、増税派だからアベノミクスをつぶすために、安倍政権をおとしめるために、意図的に変な答弁をしているのではないか」

 太田充氏は答弁しながら何度もかぶりを振った。

 「公務員としてお仕えした方に一生懸命お仕えするのが仕事ですから、それを言われると、さすがにそんなつもりは全くありません。それはいくら何でも、それはいくら何でも、ご容赦ください」

 事ここに至ってなお、政治家に仕えるのが仕事という錯誤と、そう言わしめる安倍晋三政権の強権にがくぜんとする一方、感情をあらわにする姿に思う。あれは、耐えがたいいわれなき中傷を浴び、足元から突き崩された自我を何とか保とうとしている人のしぐさに違いなかった。

 「おとしめる」などという敵意に満ちたまなざししかり、根拠もなく裏切り者呼ばわりする「たが」のはずれっぷりしかり、和田氏の異様な発言はしかし、もはや耳慣れたものといえた。ここ数年、ヘイトスピーチ問題の取材現場で私が見聞きしてきたもの、そのものだからだ。

 標的にされている在日コリアンがいかに排除され、生存の危機にさらされているか。

 
 

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