
【時代の正体取材班=石橋 学】放送倫理・番組向上機構(BPO)の放送人権委員会は8日、沖縄県の基地反対運動を扱った東京MXテレビの情報バラエティー番組「ニュース女子」で、人権団体「のりこえねっと」の辛(シン)淑玉(スゴ)共同代表の名誉を毀損(きそん)する人権侵害があったと認定した。人種や民族の扱いにも放送倫理上問題があったとし、差別やヘイトスピーチとしての問題も間接的に言及。再発防止の努力をするよう勧告した。勧告は委員会の判断の中で最も重い。
沖縄県の米軍ヘリコプター離着陸帯(ヘリパッド)建設反対運動を取り上げた昨年1月上旬の2回の放送を審査。辛さんについて「過激で犯罪行為を繰り返す基地反対運動の黒幕」で「参加者に5万円の日当を出している」かのように伝え、真実性の立証もなく、人権侵害に当たると認定した。
また、反対運動に絡めた「朝鮮人はいるわ、中国人はいるわ」「親北派ですから」との出演者のコメントについて、出自による差別を禁じ、人種や民族などに関するものを扱う場合、その感情を尊重しなければならないとする民放連放送基準を引いた上で「必要な配慮を欠いていた」と判断。辛さん側に取材しなかったことをMXが考査で問題にしなかった点と併せ、放送倫理上の問題があるとした。
弁護士である坂井真委員長は「委員会は差別やヘイトスピーチに当たるかを判断する立場にない」としつつ、「名誉毀損の問題にとどめず、民放連放送基準の規定を示して履行を求めたことで、ヘイトスピーチに関わる問題について言えることを言っているつもりだ」と説明した。
番組を巡っては、昨年12月、BPOの放送倫理検証委員会が「重大な放送倫理違反があった」との意見を公表。MXは今年3月1日、番組を同月末で終了すると発表している。
「テロの時代」示された最後の良心
人権侵害を認定した勧告の決定を受け、会見に臨んだ辛さんは開口一番、「民族差別にも触れており、涙が出た。在日やマイノリティーの人権がBPOで語られたことがうれしい。最後の良心。放送人がこれをやっては駄目だと明確に示してくれた」と語った。