
新型コロナウイルスによる肺炎(COVID19)の集団感染が発生したクルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス」で船内待機を余儀なくされている乗客乗員を支援する動きが、横浜港で広がっている。
持病薬の不足を訴える乗客の声を受けて、厚生労働省は9日、緊急性があると判断した薬の提供を始め、日本薬剤師会などに薬剤師の派遣を依頼。県と横浜市、東京都の薬剤師会が急きょ対応に当たり、同日は約20人がボランティアで出動し、12日までに1日平均10人規模で対応している。
横浜市薬剤師会理事で田中薬局(同市中区)代表の田中大嗣さん(43)は9日から11日までの3日間、横浜港内で調剤に携わった。「乗客の半数以上が外国人で、しかも高齢者。英文で書かれた薬品名や投与量に気を配りながら一人一人の内容に沿って対応した」と振り返る。
「特に緊急性が高いインスリンなどから準備した。血糖測定器などの医療機器も調達し、長く船内にいるため船酔い薬の需要もあった」と田中さん。今後も要請があればすぐに対応するといい、「薬剤師として乗船者の健康を支えたい」と話す。
一方、崎陽軒(同市西区)は12日、シウマイ弁当計4千個を船内の乗客乗員ら向けに無償提供。同社は「不自由な状況で頑張っている乗客乗員の皆さんを励ましたい」とコメントした。
首都圏の海の玄関、横浜港大さん橋国際客船ターミナル(同市中区)では、励ましの言葉を記した絵馬が掲げられている。1月に寄港した鹿児島港のボランティア組織「鹿児島港クルーズ船おもてなし隊」は、一日も早い終息を願い、2枚の絵馬に「遠く鹿児島のみんなも応援しています。頑張れ!」などと記した。
「我慢にも限度」 乗客ら心境複雑
「上陸しても迷惑を掛けるから、とどまるしかない」「ぜいたくは言わないが、我慢にも限度がある」。クルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス」内にとどまる複数の乗客が12日、神奈川新聞社の電話取材に複雑な心境を打ち明けた。