名鉄と近鉄の特急を乗り継いでみたい。地図でみると、名古屋を頂点にして豊橋から伊勢まで放物線を描くように走り抜けられる。伊勢では神宮にも寄ろう。参詣という立派な旅の目的もできる。しかし、やっぱり物足りない。旅程は一筆書きがよろしい。
鳥羽から伊勢湾フェリーを使って伊良湖岬に渡れば、バスを仲立ちに豊橋鉄道の渥美線にリレーして振り出しの豊橋に戻る。ブーメランみたいに名古屋経由で引き返すのは芸がない。そう得心して出掛けた。
この「左回り伊勢湾ぐるり旅」で一番気に入ったのは、泊まった伊勢市駅前のホテルがなかなかのトレインビューであったこと。9階の部屋から近鉄山田線が見下ろせた。市街地の高架線のカーブが遠景の山となじんで美しい。窓を開けてばかりいたので体が冷えたけれど。
フェリー乗り場では、豊橋までのバス・電車も含めた、お得な通し切符を売っていて、それがうれしく、頼もしくもあった。キャベツ畑の広がる渥美半島をバスでつなぎ、豊鉄の田原駅に。
さて二番目に気に入ったのは、そこで再会した旧東急の電車。学生時代に利用した7200系が元気だ。「昭和42年東急車両」などと記されている。それぞれの車体に半島の花の絵柄を飾ってあって、単線行き違いのたび、その塗装を確かめるのが楽しい。ちなみに私の乗った3両編成は「つつじ」であった。(F)