海上自衛隊の護衛艦「たかなみ」が2日、海自横須賀基地(横須賀市)から中東海域の活動に向けて出航した。情報収集が任務だが、情勢が緊張する中、国会承認の必要がない防衛省設置法の「調査・研究」名目での派遣には批判や懸念も強い。「日本を守って」「無事に帰って」。抗議の声も響く中、隊員の家族らは複雑な胸中で送り出した。

「頑張ってこいよー」。たかなみの船体がゆっくりと岸壁を離れていくと、約500人の家族らは手を振り、日の丸の小旗を掲げて見送った。
葉山町の女性(69)はこの日、「気をつけて行ってらっしゃい」と娘の夫(41)に声を掛けた。「本人が選んだ仕事だから仕方ない部分もある。しっかり任務に当たってほしい」と気丈に語る一方、出征経験のある父親の姿を重ね、「少し不安」とも漏らした。
横須賀市の女性(32)はベビーカーに乗せた長男(2)を連れ、甲板に整列した夫(33)に手を振った。任務の重要性は認めつつ、「子どもが小さいので、(海外派遣は)極力ないほうがいい」と吐露。別の隊員の親族の女性(40)は「場所が場所だけに、何が起きるか分からず心配。無事に戻ってきてほしい」と祈るように話した。
防衛省は派遣に当たり、隊員の家族らに説明会を開くなどし、不安の解消を図ってきた。派遣部隊の指揮に当たる第6護衛隊の稲葉洋介司令は出航前、記者団の取材に「隊員の安全確保に万全を期しており、特段危険なことはないと認識している」と強調した。
中東情勢に詳しい慶応大の田中浩一郎教授は「派遣しないという選択肢もあるが、中東の緊張した情勢の中で活動する日本の船のため、海自も何らかの役割を担わないといけないのであれば、調査・研究を目的とした派遣は近隣諸国に与える刺激が少ない」とみる。一方、米国などの有志連合とは一定の距離を保つ必要性を挙げ、「有事の際、日本がどちらにつくか選ばされかねない。有志連合とは距離を置く『独自派遣』を維持することが重要だ」と指摘している。
護衛艦「たかなみ」が海上自衛隊横須賀基地(横須賀市)から出航した2日、市民団体などが海上と陸上から派遣への抗議活動を行い、「中東派遣は憲法違反だ」などと声を上げた。