県立相原高校のシンボルとして親しまれてきた、リニア中央新幹線の神奈川県駅(仮称)の建設予定地(相模原市緑区橋本)に立つ樹齢約100年のクスノキが伐採されることになった。所有する県とも協議した結果、相模原市は保全と工事を並行するのは困難と判断。樹勢の衰退も目立つことから、保全も移植もしないことを決めた。これに保全などを求めてきた地元住民らは反発、今後も方針転換を求めて活動を続ける。
クスノキは、1922(大正11)年の同校創立時に植えられた。高さ約15メートル、幹回り4・7メートル。駅の整備に伴い、昨年3月末に移転した同校のシンボルとして親しまれてきた。
昨年11月に、同校跡地の地下で工事が始まった。駅周辺のまちづくり計画を担う市は、商業やオフィスなどに利用予定の土地に立つクスノキの保全策を検討したが、「木を保全しながら工事をするのは困難」と結論付けた。
また県や市が2017年や昨年に実施した調査で、内部の6割超が空洞で、樹勢の衰退が目立つことも分かった。移植には1千万円以上かかると見込まれることから、市は「移植をしても根付かない可能性がある」と判断。保全も移植もしないことを決めた。クスノキは市の保存樹木に指定されていたが、県は4月以降の更新をしない。市は今後、別の木を植栽して“2世”を育てることやクスノキの歴史を後世に引き継ぐことを検討するという。
こうした市の判断に対し、保全などを求めている市民グループ「橋本の緑と安心を守る会」共同代表の浅賀きみ江さんは「クスノキは住民が親しんできた地域のシンボル。駅のまちづくりはクスノキの保全を中心に考えて進めるべきだ」と憤る。グループは昨年1月から署名活動を開始し、市などに約2700筆を提出。今後も活動を続けていくという。
品川-名古屋間を結ぶリニア新幹線は、27年の開業を目指し、工事が進められている。