他にはない神奈川のニュースを!神奈川新聞 カナロコ

  1. ホーム
  2. ニュース
  3. 社会
  4. 【減災新聞】命奪う「噴石」注意を 草津白根、御嶽に教訓

【減災新聞】命奪う「噴石」注意を 草津白根、御嶽に教訓

社会 | 神奈川新聞 | 2018年2月5日(月) 19:55

噴石で窓が割れたロープウエーのゴンドラ(手前)。火山灰が付着していた
噴石で窓が割れたロープウエーのゴンドラ(手前)。火山灰が付着していた

 1人が死亡、11人が重軽傷を負った草津白根山の本白根山(群馬県草津町)の噴火で、訓練中の陸上自衛隊員やスキー客を襲ったのは、火口から飛散した噴石だった。戦後最悪の計63人が死亡、行方不明となった2014年9月の御嶽山(長野、岐阜県)噴火でも、犠牲者の大半が頭や体に噴石が当たったことによる「損傷死」だったと分析されている。突発的な水蒸気噴火=自助のヒント参照=の際は身を守るのが難しいだけに、登山やレジャーなどで活火山の火口周辺に近づく際は注意が必要だ。

破壊力


 噴石は、サイズの大小に分けて考えられている。


噴石で穴が開いたゴンドラの天井部分=1月24日、群馬県草津町
噴石で穴が開いたゴンドラの天井部分=1月24日、群馬県草津町

 「大きな噴石」は爆発的な噴火によって火口から吹き飛ばされる直径約50センチ以上の岩石などで、風の影響を受けずに弾道を描いて飛散、短時間で落下する。建物の屋根を突き破るほどの破壊力があり、直撃を受けると、命を失う危険性が高い。これに対し、「小さな噴石」は直径2ミリ以上の噴出物。より粒径が小さいものは「火山灰」と呼ばれ、さらに区別されている。

 噴石はサイズが小さいほど遠くまで飛び、風にも流される。火口から10キロ以上離れた地点に降下する場合もあるが、噴出してから落下するまでの時間は数分から十数分程度。いち早く屋内に退避することが欠かせない。

 草津白根山の噴火では、火口に近いスキー場のゲレンデで噴石による陥没や穴が数多く確認され、直径1メートルほどの「大きな噴石」も報告されている。噴石の直撃で窓が割れ、天井に穴が開くなどした「白根火山ロープウェイ」のゴンドラの中には、直径十数センチの噴石が床に転がっていた。


噴火した草津白根山の山肌にあいた噴火口(左下)。右上はロープウエーの山頂駅=1月28日、群馬県草津町(共同通信社ヘリから)
噴火した草津白根山の山肌にあいた噴火口(左下)。右上はロープウエーの山頂駅=1月28日、群馬県草津町(共同通信社ヘリから)

 死傷者は当初、雪崩に巻き込まれたとみられていたが、群馬県によると、いずれも噴石が被害要因。負傷者のうち3人が骨折などで重傷となり、ドクターヘリで搬送された人もいる。


頭守る



 同様に噴石の影響が大きかった御嶽山噴火でも、山頂付近の山小屋の屋根を噴石が突き破った。専門家の現地調査で直径60センチ程度の大きな噴石が発見され、火口側の壁面には銃撃を受けたような穴が多数残っていた。他にも、山頂付近の石造物が破壊されていたり、手すりとして使われていた鉄パイプが破断したりしており、破壊力の大きさを物語る。

 辛うじて生き延びた登山客は岩陰に身を隠すなどして噴火のピークをしのぎ、どうにか下山。背負っていたリュックで頭を守り、後で確認すると、中の魔法瓶がつぶれていたという人もいた。以後、活火山に登る際はヘルメットやゴーグルなどを装備品に加えることが推奨されている。

 一方、「ごく小規模」だった15年6月の箱根山(箱根町)の噴火では、火山灰は大涌谷の火口から4キロ先まで飛散。噴石も確認されたが火口の周囲に積み重なる程度で、人的被害はなかった。

 この時の教訓も踏まえ、同町や県などでつくる箱根火山防災協議会が大規模な水蒸気噴火やマグマ噴火を想定して同年8月に策定した「箱根山(大涌谷)火山避難計画」では、噴石の危険性を考慮。大涌谷周辺の住民らに1次避難として、すぐに直近の鉄筋コンクリート造りの建物に逃げ込み、火口と反対側の部屋や地下、1階などに退避するよう求めた。

 その後さらに、噴石などの影響を避けるためマイカーに相乗りして芦ノ湖キャンプ村や宮城野浄水センターなどの2次避難場所に向かい、町がチャーターしたバスなどに乗り換えて、近隣市町を含む遠方へ3次避難するという段階的な安全確保策を示している。

自助のヒント 水蒸気噴火


 活火山の地下に存在するマグマが直接噴き出すのではなく、より浅い場所にある地下水が熱せられて大量の水蒸気が発生し、爆発する現象。火口付近の岩石が砕け、噴石や火山灰となって飛散する。水蒸気爆発ともいわれる。噴火前に微小な火山性地震の増加や地殻変動、火山ガスの濃度上昇などが観測される場合もあるが、目立った兆候がなかったり、直前のみにとどまったりすることもあり、前兆把握は難しい。御嶽山噴火は一時的に増加した火山性地震が減少した後に発生し、箱根山も地震回数が減少傾向の時に噴火した。

 
 

噴火に関するその他のニュース

社会に関するその他のニュース

PR
PR
PR

[[ item.field_textarea_subtitle ]][[item.title]]

アクセスランキング