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〈時代の正体〉「朝鮮人虐殺」記載へ 副読本問題で横浜市教委が方針

社会 | 神奈川新聞 | 2016年10月8日(土) 02:00

 【時代の正体取材班=石橋 学】横浜市教育委員会が作成中の中学生向け副読本の原案で関東大震災における朝鮮人虐殺の記述がなかった問題で、同市教委は7日、虐殺の史実を記載する方針を明らかにした。市教委定例会で報告した。虐殺の背景まで詳述した旧副読本は、必要に応じて生徒が閲覧できるようデジタルデータ化して活用を続けることを検討している。

 作成を担当している指導企画課の三宅一彦課長は「横浜で起きた痛ましい出来事を学ぶことで歴史の理解を深め、防災教育の面からも多面的・多角的に考えることのできる記載になるよう検討している」とし、記載を前提に編集作業を行っていることを教育委員に説明した。

 新副読本は読み物中心だった従来の副読本を、自ら学習を深めていくための補助教材としてコンセプトごとリニューアルするもの。朝鮮人虐殺は歴史のページで扱う方向という。

 旧副読本では「朝鮮人が暴動を起こす」などのデマを信じた人たちが殺害に走ったこと、背景には植民地支配に反発する朝鮮人への恐れや差別意識があったことが書かれていた。新副読本を入り口に、詳しく書かれたデジタルデータ化した旧副読本へ誘導するといった活用を学校現場に促していくとしている。

 新副読本を巡っては市民団体「歴史を学ぶ市民の会・神奈川」(北宏一朗代表)が情報公開制度で原案を入手したところ朝鮮人虐殺の記述がないことが判明。歴史研究者や市民団体から虐殺の史実と背景を載せるよう求める要望書が市教委に寄せられていた。

「教訓くむべき」、教育委員理解示す



 市教委定例会は20席の傍聴席が埋まり、副読本問題の関心の高さをうかがわせた。市教委事務局の報告にも5人の委員全員が発言。朝鮮人虐殺を記載することへの異論は出なかった。

 注文をつけるように持論を展開したのは今田忠彦委員。「この歴史的事件の記述についてはイデオロギー闘争のようになっていて残念。子どもたちのために何が大切か、大局観を忘れずにバランスの取れた慎重な対応が必要だ」。具体的な説明もなく「イデオロギー闘争」という唐突な発言をし、傍聴席からざわめきも起きた。

 一方、宮内孝久委員からは「人間は過去を正当化したがるもので(虐殺という)悲惨な事件を起こす可能性があるということを教訓として刻まなければいけない」と積極的な理解が示された。

 定例会終了後、指導企画課の三宅一彦課長は「こちらの考えを否定した委員はいなかったと受け止めた」と話した。今月中の原稿確定を目指して方針通りに編集作業を進め、岡田優子教育長の決裁を経て年明けにも生徒全員に配本したいとしている。

 
 

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