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“命の情報”教訓に 裁判踏み切った夫の真意 逗子ストーカー訴訟

社会 | 神奈川新聞 | 2018年1月16日(火) 11:04

三好梨絵さんの遺影を前に会見に臨む夫 =15日午後5時ごろ、横浜市中区
三好梨絵さんの遺影を前に会見に臨む夫 =15日午後5時ごろ、横浜市中区

 命に関わる重要な個人情報-。逗子市で2012年に起きたストーカー殺人事件で、刺殺された三好梨絵さん=当時(33)=の住所が市役所から加害者側に流出したことを巡る訴訟。横浜地裁横須賀支部は15日、市側の過失責任を全面的に認めた。梨絵さんの夫(47)は前向きに受け止め、改めて再発防止を強く願った。

 「情報漏えいが起きてはいけないと警鐘を鳴らす意味で、納得のいく判決理由だった。どこの自治体でも起きうることとして、気を引き締めて個人情報を扱ってほしい」

 閉廷後、横浜市内で開かれた記者会見。夫は視線を手元に落とし、言葉を選びながら落ち着いた口調で語った。

 事件から5年余り。妻を亡くした悲しみや守ってあげられなかった悔しさは今も消えない。「同じ悲劇を二度と繰り返さないために、判決で全国の自治体に警鐘を鳴らしたい」。16年10月、提訴に踏み切った。

 市側の過失を全面的に認めた判決。「閲覧制限を掛けていた情報は単なる個人情報ではなく、命に直接つながる大事な情報。裁判所がこちらの主張をほぼ100パーセント受け入れてくれた」

 一方、1100万円の請求額に対して、認められたのは10分の1に相当する110万円にとどまった。「(対応した市職員は)情報漏えいの相手方の真の目的を知らなかった」として、殺害と情報漏えいに明確な因果関係を認めなかったためだ。

 それでも、「命の対価ではなく、命に関わる情報が漏れたことに対する賠償額。警鐘を鳴らす意味では十分な金額」と評価する。ただ、請求額と大きな開きがあるため、控訴は今後検討したいと含みを持たせた。

 梨絵さんにはどう報告するか。記者の問い掛けに、夫はしばらく沈黙し、震える声で絞り出すように言った。「この金額でごめんね、ということ。何とか頑張って判決までたどり着いたよ、ということは伝えたい」

 やれることをしてくれてありがとう-。そう言ってくれると信じている。

 
 

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