
人と人とのつながりが希薄になったとされる現代。高齢化や人口減少が進む中、かつてのような、つながりのある地域をつくるにはどうしたら良いのか。昨年12月に開催された「第3回よこはま地域福祉フォーラム」の室田信一・首都大学東京都市教養学部准教授の講演から、ヒントを探った。
室田さんはまず、米国の政治学者ロバート・D・パットナムの著書「孤独なボウリング」を紹介し、社会の変容ぶりを伝えた。
米国では1960年代、チームをつくり、そろいのユニホームを着てボウリングをする文化が根付いていた。これに対し90年代以降、1人でボウリングをやる人が増えたと同著は指摘する。競技人口そのものは大きく変わっていないにもかかわらず、である。パットナムはこの現象を、米国人の孤立化が進んでいることの象徴ととらえた。
翻って日本。室田さんはさまざまな写真を見せながら現状を説明した。その一つが、1人用のカラオケボックス。1人で入り、好きな唄だけ歌っていく客が増えているという。
「極め付きはこれ」と紹介したのが、焼き肉店での光景。ついたてで区切られた空間で、客はそれぞれ1人で焼き肉を食べている。会場からは驚きの声が上がったが、こうしたビジネスが成り立っているのが現実だ。「社会全般的に孤立化し、1人で何かをすることが当たり前になっている」
京都大学の食堂には学生の要望を受けて、中央についたてのあるテーブル席が登場したという。1人席、通称「ぼっち席」だ。「1人でいることに安心する、という象徴だと思う」
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続いて室田さんは会場を訪れた人に質問した。「親もしくはきょうだいが高齢になり、1人で暮らすことになる。あなたは、家族の安否をどう確認しますか」
選択肢は(1)セキュリティー会社などの有料サービスを利用する(2)地域で見守り活動(無料)を推進するグループに依頼する(3)自分で電話やメールをして確認する(4)その他-の四つ。最も多く手が挙がったのは、(3)だった。
「(2)は無料で良いが、どうも気を遣う。(1)は少々、人間味に欠ける。本当は(2)のように皆で支え合っていければ良いが、自分でやった方が、気が楽だと思ってしまう」。来場者の心理を推測した上で、強調した。「人と人とのつながりが希薄になる中で、つながりづくりを社会的に進める必要があるのではないか」と。
ここで言う「つながりづくりの社会化」とは