6400人余りが犠牲になった阪神大震災に紙一重で巻き込まれなかった経験から、神戸市内の追悼行事に参加してきたトランペット奏者松平晃さん(77)=川崎市中原区=が、昨年10月の台風19号で床上浸水の被害に遭った。今も2階で生活しながら自宅の修繕に追われるが、震災25年の節目となる今月17日は、例年と同じように神戸の街を見下ろす高台で演奏に臨む。「これまでと違うのは、私も被災者だということ。一緒に困難を乗り越えていきたい」。支えてくれた人たちへの感謝を胸に、鎮魂の調べを奏でる。
生かされた命
会社勤めの傍ら、トランペットの演奏で各地を訪ねていた松平さんはピアニストと共演するため、1995年1月16日まで神戸市内に滞在。その日のうちに川崎に戻り、翌17日未明の阪神大震災をニュースで知った。「前の日に通った線路がめちゃくちゃになり、泊まった三宮ではビルが倒壊していた。もし、もう1日、神戸にいたら」
「天国に一番近い場所で」と、同市中央区の夜景の名所で始まった追悼行事に99年から招かれるようになり、ほぼ毎年演奏。「変わりゆく神戸の街並みに対応できるように」と毎回違う選曲にこだわり、童謡や唱歌を奏でてきた。