
東日本大震災の教訓に学び、命を守るすべを被災地の人と考える「むすび塾」が2月3、4の両日、平塚市で開催される。東北のブロック紙・河北新報社(仙台市)、神奈川新聞社、同市の3者が協力。語り部などとして活動する3人を宮城県から招き、苦難の体験に耳を傾ける。
3日は市民向けの防災講演会(平塚市主催)で「東日本大震災を忘れない」がテーマ。「震災語り部の会ワッタリ」会長の菊池敏夫さん(68)=亘理町、「東日本大震災 命のかたりべ」の高橋匡美さん(52)=塩釜市、「TTT」の添田あみさん(19)=東松島市=が講師を務める。
4日には、津波で浸水する恐れのあるなでしこ地区で住民の避難訓練を実施。危険性の低い地点にいち早く向かうための経路などを確認し、語り部や専門家とも意見を交える。
むすび塾は、河北新報社が2012年に開始。震災前に継続していた紙面での啓発だけでは住民の防災意識の向上に結び付かないとの反省から、町内会や学校などの小さな単位で実践的な訓練や被災者との対話を行っている。全国の地元紙と連携し、地域を超えて防災の輪を広げる狙いもある。
防災講演会は無料、申し込み不要。問い合わせは、平塚市災害対策課電話0463(21)9734。
遡上津波で浸水の危険 なでしこ地区
「むすび塾」の避難訓練が行われる平塚市のなでしこ地区は、川を遡上(そじょう)する津波で浸水するリスクを抱える。目の前の相模湾に延びる相模トラフで巨大地震が起きると、津波到達までの限られた時間の中で、海からはもちろん、川からも離れることが必要になる。
東日本大震災を受けた県の新たな津波想定で、同市にとって最悪となるケースは、相模トラフの巨大地震が内陸の分岐断層と連動する場合。高さ9・6メートルの津波が地震のわずか6分後に押し寄せる。
2級河川・金目川下流域に位置するなでしこ地区では、1キロほど内陸まで浸水。木造住宅の倒壊が避けられない3メートル以上の浸水が見込まれた地域もある。
河川を遡上する津波は東北の各地に深刻な被害をもたらしたが、撫子原自治会の臼井照司会長(69)は「震災から月日がたち、住民の意識が薄れてきている。教訓をどう共有していくかが課題」と話す。
市は避難意識の向上に向け、津波が及ばない地点から6分で移動可能な場所を逆算して求め、最適な避難ルートなどを確認してもらう「逃げ地図」作りを沿岸の各地区で実施。「いち早く行動することで命を守れる」と呼び掛けている。