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団地、共助の防災 リタイア後の模索

社会 | 神奈川新聞 | 2018年1月7日(日) 10:24

考案した防災マニュアルや備品を確認する竹内さん(右)と瀬尾さん=相模原市南区
考案した防災マニュアルや備品を確認する竹内さん(右)と瀬尾さん=相模原市南区

 地震に対する備えを地道に積み上げてきたわけではない。だからこそ芽生えた危機感を胸に、東日本大震災後のわずか3年ほどで共助の形を整えた。1980年に入居が始まり、現在は約4千人が居住する相模原市南区の大規模団地、相武台グリーンパーク。発災時に逃げ込むのは、近隣の避難所ではない。独自に「サブ避難所」と位置付けた自分たちの団地になるべくとどまれるように支え合い、高齢化が進む住民の災後の負担を減らす-。新たな共助の輪の中心には、リタイア後に地域デビューした男たちがいる。

ポストに名簿、災害対応マニュアル



 小田急線相武台前駅から北へ約1キロ。約1600世帯が入居する相武台グリーンパークは、5階建てを中心に約40棟が連なる。エレベーターはなく、日常的に同じ階段を使う1~5階の計10世帯ずつの集合ポストに、2年ほど前に追加された共用ポストがある。

 ダイヤル式の錠が付いた「防災ポスト」。階段ごとに計約160個あり、住民名簿や安否確認用のカード、筆記用具、災害対応の手順や役割をまとめた防災マニュアルなどがそれぞれに収められている。

 大地震の際は、共助の最小単位となる階段ごとの10世帯から選ばれた「階段委員」を中心に、これらの備品を活用。団地内の街区ごとに定めた広場や緑道など7カ所の避難スペースに居住者を誘導し、安否や被害状況などを確認、共有する。

 さらに、自治会や管理組合の役員、棟委員などによる自主防災隊が救護や物資の確保、情報収集などを分担し、住民が自宅にとどまることを可能な限り目指しつつ、団地内での避難生活に臨む。

 こうした主体的な共助を発案したのは、身近な一時避難場所や市の指定避難所である近くの中学校で、団地の住民を収容しきれないことに気付いたからだ。

 「中学校の受け入れ可能人数は1290人。住民が押し寄せたらパンクしてしまう」と相武台グリーンパーク自治会連合会前会長の竹内一三さん(71)。「とにかく自分たちで助け合うしかない」。東日本大震災など近年の大規模災害では、行政が機能不全に陥る「公助の限界」が浮き彫りになっていた。

「命を守ろう」住人向けに塾


 竹内さんの呼び掛けで自治会と管理組合の災害対策合同委員会が2014年1月に発足。会合を重ねて取り組むテーマを話し合い、アンケートで住民の備えの現状を探った。

 会社に勤めていたころは「自分の住む棟と最寄りのバス停との間を毎日往復するだけだった」という竹内さん。「団地内の棟の配置も知らなかった」が、共助をどう積み増すかを考えると止まらなくなり、夜中までパソコンに向き合った。現自治会連合会会長の瀬尾守一さん(67)も「現役のころは自治会に関わっていなかった」が、消防職員としての知識を生かし、額を突き合わせた。

 15年12月、まずは1棟のみの訓練で独自避難場所の有効性を見極め、その半年後には団地全体で本格的な避難訓練を実施。説明会も開いて参加を求め、入念にシナリオを練って臨んだところ、4割近い約1500人もの参加があった。

 大きな手応えを得たものの、本年度の全体訓練は参加が減り、住民の関心の維持はなおも課題となっている。

 「初期消火などの訓練は毎年行っていたが、参加は100人程度だった。新たな対策が根付くよう取り組まなければ」と瀬尾さんは今後を見据える。「住民の6割が参加していないのだから、満足できるものではない」と受け止めた竹内さんは防災士の資格を取得し、家具の固定方法などを手ほどきする「防災塾」を開き始めた。「共助の手前にある、命を守る自助の大切さを伝えたい」からだ。


各棟の階段ごとにある集合ポストに追加された「防災ポスト」
各棟の階段ごとにある集合ポストに追加された「防災ポスト」
 
 

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