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論説委員が振り返る2017年〈上〉安倍改憲案「価値なし」

社会 | 神奈川新聞 | 2017年12月30日(土) 12:17

安倍晋三首相の演説に、大勢の聴衆が耳を傾けた =10月5日、川崎市多摩区
安倍晋三首相の演説に、大勢の聴衆が耳を傾けた =10月5日、川崎市多摩区

 戦後72年を刻み、再来年には「平成」が幕を下ろすことが決まった2017年。就任したばかりのトランプ米大統領の言動が、世界の混迷にますます拍車を掛けた。国内では憲法改正に意欲を示す安倍晋三首相が「国難突破」を名分に解散した総選挙で再び改憲の発議に必要な3分の2の勢力を確保する自民の圧勝。県内に目を転じれば、スポーツ界で県勢が明るい話題を提供したが、「座間9遺体事件」など暗澹(あんたん)たる出来事も相次いだ。社説を担当する論説委員がこの1年を振り返り、18年を展望する。

自民圧勝は「敵失」


国政・憲法改正
 -10月の総選挙は再び「自民1強」の選択となったが、どうみるか。

  自民圧勝は「敵失」によるものにすぎない。立憲民主が結党されたが、リベラル支持層の受け皿不足は深刻だ。

  国政選挙が政権の権力基盤を固める装置になってしまっている。争点や議論がなければ、投票率も上がりようがない。

  野党乱立で与党を利する選挙を何度繰り返しているのか。小選挙区制導入から20年、選挙制度を再考する時かもしれない。

  野党第1党の立憲民主党が支持率を伸ばせるかどうかがポイントだ。自民党との違いを示し、国会審議で存在感を発揮できるかどうかが鍵を握るだろう。

 -総選挙後の国会審議では「森友学園」で新事実も判明し、論戦が尾を引く。

  首相1強、巨大与党に官僚機構が逆らえない構図だ。官邸が行政情報を独占し都合よくコントロールしているかのように映る。

  森友の土地売買を巡っては、少なくとも役人の懲戒処分者を出さないと世論は納得しないのでは。

  公文書は、時の政府や過去の政権の政策決定の妥当性を検証するために欠かせない。役所が組織防衛や責任回避のために廃棄したり、隠したりできる余地を残してはならない。

 -保育無償化などが有権者に響いた面もあるか。

  教育・保育無償化はバラマキだ。負担できる世帯に相応の負担を求め、介護や保育、障害者福祉の現場の環境をまず改善すべきだ。

  無償化では、政府の当初案は認可外保育施設が対象外となっていた。「認可」に入れず「認可外」に入っている家庭の実態を把握していたとは思えない。無償化以前に認可保育園に入所できない状況を改善すべきだ。

  横浜では幼稚園預かり保育の利用者が8千人近くおり、幼児教育無償化の対象にならなければ逆に待機児童の増加につながりかねない。

 -改憲勢力が3分の2を占め、安倍政権は憲法改正を見据えているだろう。

  憲法9条に自衛隊を明記する改憲案は国民投票など多大な政治的労力をかける価値がない。戦後の出発点は先の敗戦。二度と悲劇は繰り返さぬとの思いで守ってきた9条を改める理由にしては安倍改憲案は余りに軽すぎる。

  高等教育の無償化のための改憲も必要ない。憲法26条の下で法制定すればよいだけだ。改憲のために国民に受け入れられやすいからと、無償化を掲げたとしか思えない。

  憲法改正が国民の関心事とは言い難い。

 -昨年の天皇陛下のメッセージを受け退位問題は結論を見た。

  天皇の生前退位は、象徴天皇制や将来の皇室の在り方を冷静に考える機会にすべきだろう。

  天皇の退位は人権の問題とも、憲法とも密接に絡む。皇室の人々の人権について、私たちは真剣に向き合っているだろうか。

中国への働き掛け鍵



国際・安全保障・経済
 -北朝鮮の核開発、ミサイル発射と日本を取り巻く国際情勢は厳しい。

  北朝鮮が日本、米国を攻撃できるミサイルを持ったことは、日本の国防意識を大きく変える可能性がある。

  トランプ外交はブレーン、スタッフを欠き、場当たり対応が目立つ。トランプ氏が人気取りや疑惑隠しに傾けば、朝鮮半島をはじめ国際情勢に影響が出るのは必至だ。日本の役割は対話による解決を粘り強く説くことだ。

  北朝鮮問題で鍵を握るのはやはり中国。「一帯一路」政策への協力などで協調しつつ、北朝鮮に圧力をかけるよう働き掛けるのが現実的な策だろう。

 -核兵器禁止条約の採択に尽力した非政府組織「ICAN」のノーベル平和賞受賞もあり、核保有国と足並みをそろえた日本の条約不参加に批判の声がある。

  核の傘の下にいても核兵器廃絶の旗振りはできるはず。唯一の被爆国としてその道を探るべき。現状はもどかしさばかりが募る。

  政府は「核軍縮」から「核の傘の強化」にシフトしている。対米追従が色濃い安倍政権の象徴ともいえる。

  唯一の戦争被爆国として原点に立ち返るべきだ。信頼と対話に基づく核廃絶を追求するというメッセージを国際社会に発信していくことが、日本人の取るべき本来の振る舞いではないのか。

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