「陸上自衛隊にとって、まさに唯一無二の部隊」。陸自座間駐屯地(座間、相模原市)に司令部を置く陸自中央即応集団(CRF)の第8代司令官に就いた小林茂陸将は、7月の着任式で高らかに宣言した。テロやゲリラ、生物化学兵器の対処、国際活動に従事する防衛相直轄部隊としての矜持(きょうじ)がにじんだ。
2007年に発足したCRFが06年の在日米軍再編合意に基づき、司令部を朝霞駐屯地(東京都)から座間に移したのは13年。日米の部隊が持つ中枢機能の一体化を促すとされた。座間で07年に発足していた米陸軍第1軍団前方司令部とCRFが同居することになり、陸自の基地としても分屯地から駐屯地に格上げされた。
その「精強な部隊」(小林司令官)は陸自の全国5個方面隊を束ねる陸上総隊の創設に伴い、17年度に廃止される方針が決まった。13年に策定された防衛大綱の中期防衛力整備計画で示され、17年度予算案の概算要求に正式に盛り込まれた。
「日米連携の強化は空手形に終わった。施設整備の無駄が目立ち、見通しが甘い」。第1軍団司令部発足とCRF移転に反対してきた住民団体代表の加藤陽子座間市議は、司令部の座間移転から間もないCRF廃止に疑念を呈す。
一方、防衛省は「日米連携は揺るがない」と強調。CRF司令部機能を発展的に引き継ぐ陸上総隊司令部の日米共同部を新たに座間に配置するからだ。
座間には駒門駐屯地(静岡県)からも施設中隊が移駐。災害派遣や国際活動にも従事する第4施設群の3個中隊が集約されることになる。定員は約590人から約470人に減るが、防衛省は「地元への影響を考慮し、実員の減少は最小限に抑える」と理解を求める。危機管理の充実を図る遠藤三紀夫座間市長は、一連の陸自再編を「部隊増強は市にとってプラスだ」と歓迎した。
米陸軍の県内施設でも変化が表れている。キャンプ座間の司令部庁舎2棟の建て替えを含む大規模な改修に乗り出した。ヘリポートでは本年度に入り、厚木基地(大和、綾瀬市)の海軍ヘリ部隊の訓練とみられる騒音が激化。4月には横浜ノースドック(横浜市神奈川区)でヘリコプターの特殊訓練が展開された。
基地監視団体リムピースは「米軍のなし崩し的な運用が目立つ」と警戒する。基地と隣り合う生活者に運用の実態が見えにくい状況も変わってはいない。
15年8月の在日米陸軍相模総合補給廠(しょう)(相模原市中央区)の爆発火災は、事前備蓄物資だった酸素ボンベに引火したとみられるが、詳細は発生から1年が経過しても最終報告が示されないままだ。
「検証に関われないジレンマを感じる」。相模原市の加山俊夫市長は、米側が握る管理権に不満を隠さなかった。