
2018年2月11日の営業運転開始へ、相模鉄道が調整を進めているのが、新型車両「20000系」だ。
最大の特徴は、横浜の海をイメージした濃紺の「ヨコハマネイビーブルー」への全面塗装。都内を走る電車は、塗装せず銀色にラインが入った車体が多く、「相鉄は知らないけど、青い電車は見たことがある。そこをフックに、相鉄線に興味を持っていただく」。同社の担当者は話す。車内は居心地の良さや開放感を重視し、ガラス製の荷物棚なども導入。09年の11000系以来となる新型は、洗練された印象が強い。
首都圏で生活する3500人を対象に、同社が16年度に実施したインターネットでの調査によると、相鉄線の認知度は4割強程度。他社の路線のように観光地を持たず、県民にとっても「相鉄線は二俣川の運転免許試験場に行くのに乗る電車」との見方が少なからずあるようだ。
そこで約2年前に本格始動したのが、駅舎や車両、制服などのデザインコンセプトを統一する「デザインブランドアッププロジェクト」。熊本県のPRキャラクター「くまモン」の生みの親の水野学さんをはじめとしたデザイナーの監修の下、駅舎はスタイリッシュな空間へと改装が進む。
相鉄の歴史は1917年、相模鉄道と神中鉄道という二つの鉄道会社が創立された時代にさかのぼる。両社とも主に相模川の砂利輸送を担ってきたが、戦後、横浜の都市化とともに輸送人員が増加、路線の延伸を図ってきた。しかし、輸送人員は、95年度の約2億5千万人をピークに減少傾向となり、2016年度は2千万人少ない約2億3千万人となった。
19年度にJR線との直通線が開通すれば、例えば二俣川駅から新宿駅までは現行の59分から44分に短縮される。相鉄ホールディングスの林英一社長は「100年に1度とはオーバーな言い方かもしれないが、非常に大きなチャンスだと思っている」と話す。同社は大きな転機を捉え、東急線との直通線向けの20000系に続き、JRとの直通線向けの新型車両「12000系(仮称)」も投入する計画だ。
相模鉄道が12月18日、創立100周年を迎えた。この間、相鉄グループの事業は鉄道を核に、ホテル、不動産、流通と多岐にわたる領域に拡大。19年度下期にJR線、22年度下期には東急線との相互直通運転を計画し、首都圏全体を視野に入れたブランドイメージの構築に取り組んでいる。新たな飛躍へ向けた戦略を報告する。