【時代の正体取材班=石橋 学】在日コリアンをはじめ、さまざまなルーツを持つ子どもたちが通う川崎市立桜本中学校(同市川崎区桜本)で20日、人権の大切さを学ぶ講演会が開かれた。全校生徒約150人を前に講師の在日3世の崔江以子(チェ・カンイヂャ)さん(44)は「残念ながら社会には差別の現実がある。人権を大切にすることを学んできたあなたたちは希望」と語り掛けた。
崔さんは、外国につながるルーツを持つ人たちが多く暮らす桜本地区の多文化交流施設・市ふれあい館の職員として働き、差別のないまちづくりに取り組む。同地区の市立さくら小と同中では同館との協働でキムチづくりやフィリピン文化体験といった授業を通じ、人権尊重教育が毎年積み重ねられてきた。
そんな桜本を目掛け「朝鮮人を殺せ」と叫ぶヘイトデモが行われたのは2015年から16年にかけてのことだった。
崔さんは街ぐるみの反対運動がヘイトスピーチ解消法の成立や同市で進むヘイト対策につながっていることを紹介。「桜本が大切にしてきた『共に生きる』という思いが街を守った」。真っ先に、真っすぐに「俺ら普通に仲良くやってるのに、なんでひどいことを言われなきゃいけないんだ」と差別に抗(あらが)いの声を上げたのは桜本中卒業生の若者たちだった、と語った。