2017年のプロ野球界で躍進を果たした横浜DeNAベイスターズ。日本一の夢はパ・リーグ覇者ソフトバンクに阻まれたが、球団史に誇れる1ページを刻んだ。1998年に横浜スタジアムが歓喜に沸いてから19年、肌で感じた再びの熱気に心を奮い立たせ、必死にキーボードをたたいた1年だった。
一つのアウトが地鳴りのような歓声を呼び、次のアウトを呼び込むように球場全体を支配した。長い低迷に耐え、信じ続けたベイスターズファンが演出したのは、レギュラーシーズンを大きく上回る本拠地の一体感だった。
11月1日の日本シリーズ第4戦。3連敗を喫した背水のチームに、浜口遥大選手(22)が新人らしからぬピッチングで息を吹き込んだ。八回途中まで無安打無得点。シリーズ初勝利をもぎ取ると、第5戦は筒香嘉智選手(26)ら中軸が逆転劇を生んだ。
舞台を敵地・ヤフオクドームに戻した第6戦、今永昇太選手(24)がシリーズ2度目の2桁奪三振を記録。延長戦で敗れはしたが、崖っぷちからの逆王手を期待させる「あと一歩」の敗退だった。
自信揺るがず
日本シリーズ進出を決めた数日後。不動のレギュラーの倉本寿彦選手(26)は「正直、自分が出場することがまだ不思議な感じなんです」と夢心地だった。複数の若手も似たような言葉を並べる。スタメンの平均年齢は26歳。19年前にはまだ、ボールを握り始めたばかりの選手がほとんどだったろう。
「いろんな人から言われてきたよ。『他球団と比べてこのチームは経験が浅い』ってね」とラミレス監督。春季キャンプやシーズン中、OBや評論家から指摘されたこともあったが、自信は揺るぎなかった。「そこをカバーする力がこの選手たちにはある」
その言葉を象徴したのが8月22~24日、首位広島を相手に3夜連続のサヨナラ勝ちを収めた「ハマスタの奇跡」だ。特に初戦は、プロ野球史上初の3者連続本塁打で決着。第2戦で決勝打の梶谷隆幸選手(29)は「広島相手にこれだけの戦い方ができる。チーム全体が自信を持てる勝利になった」と実感を込める。
反撃に期待感
クライマックスシリーズ(CS)に入っても、ファーストステージで2位阪神、ファイナルステージで1勝のアドバンテージを持つ広島相手に、それぞれ初戦を落としながら巻き返して「下克上」を果たした。
勝負事はやはり「何が起こるか分からない」。そう教えられたシーズンだからこそ、リードを許したゲームに見切りをつけ、敗戦を想定した原稿を書き始める気にはなれなかった。
締め切り時間が迫った日本シリーズ第6戦、1点リードの九回に満を持して登板した守護神・山崎康晃選手(25)が同点のソロ本塁打を浴びても「まだ挽回できる」。そんな心境のままゲームセットの瞬間を迎えた。
涙 無駄にせず
2年連続のCS進出にとどまらず、広島に敗れてファイナルステージで流した昨年の涙を、選手たちは無駄にはしなかった。「必ずやり返す」。1年前と同じ言葉を向けた相手は、広島からソフトバンクへと変わった。
12球団のうち、2球団のみに許されたひのき舞台は、伸びしろあふれるナインを成長させた。「日本シリーズ出場を当たり前に」「来年は必ずリーグ優勝しなきゃいけない」。足りなかった「経験」に裏打ちされた力強いこの言葉こそ、常勝軍団への土台になるはずだ。