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「過大な不利益回避を」
「人質司法」待った 不当勾留阻止へ運動 県弁護士会

社会 | 神奈川新聞 | 2017年12月11日(月) 10:52

過去4年の勾留請求却下率の推移
過去4年の勾留請求却下率の推移

 無罪を訴える容疑者の身柄拘束を長引かせる「人質司法」が問題視される中、神奈川県弁護士会が12月から捜査機関による不当な勾留を阻止する運動を開始した。早期の釈放が妥当と思われる事件を対象に、その理由を裁判所へ積極的に伝え、必要に応じて準抗告(不服申し立て)も実施。身体拘束の可否を慎重に検討する気風をつくり、法曹界の意識改革につなげる。

 刑事事件で容疑者が警察に逮捕されると、身柄は48時間以内に検察官に送られる。検察官は証拠隠滅や逃亡の恐れなどがあり、引き続き身体を拘束することが必要と判断すれば裁判所に勾留請求し、裁判所はその可否を判断する。勾留期間は10日間だが、やむを得ない場合はさらに最長10日の延長もできる。

 裁判所の全国統計によると、検察官が行った勾留請求の却下率は、1978年から2007年まで1%以下で推移。近年は1~3%台と上昇傾向にはあるものの、大半のケースで検察官の請求を裁判所が追認してきた実態がうかがえる。

 運動はこうした現状に一石を投じるために企画された。裁判官の立場からすれば、勾留を不要とする根拠もなしに、検察官の請求を却下することが難しいのも事実だ。ゆえにその根拠を裁判所に示すことが運動の中心となる。

 具体的には、弁護士が裁判所に意見書などを提出し、容疑者に逃亡や証拠隠滅の恐れがない理由を積極的に説明していく。勾留決定後でも、複数の裁判官の合議で勾留の是非が審理される準抗告を申し立てるなどして再考を促す。

 勾留に慎重な判断が求められる理由について、県弁護士会刑事弁護センター運営委員会の藤本創吉弁護士は「法が本来予定している刑罰より、社会的制裁の方が重くなってしまうから」と指摘する。

 判例に照らすと罰金刑で済まされる事案でも、勾留が長期に及ぶことで会社員なら職を失う恐れも出てくる。藤本弁護士は「そういう過大な不利益はやはり回避すべきで、運動はそのために取り組むもの。身柄拘束の全てを否定するつもりはない」としている。

 運動期間は18年2月末まで、県弁護士会の全弁護士に協力を仰ぐ形で取り組む。運動期間終了後は総まとめ研修を開いて成果や課題を共有し、弁護技術を洗練させていく。19年度からは毎年4~6月を運動期間とし継続する。

埼玉先駆け 成果如実
正式取り組みで訴求力



 身柄の早期解放を求める運動は近年、全国の弁護士会で実践例が増えている。弁護士会を挙げた正式な取り組みとすることで、各地の地裁や地検への訴求力が高まるためだ。先駆けとなった近隣県では、はっきりと成果が表れている。

 運動は、埼玉弁護士会が全国に先駆けて2010年に着手した。13年に2・78%だったさいたま地裁管内の勾留請求の却下率は、14年に7・68%へ急上昇し、15年と16年も6%台の高い数値を維持した。

 さらに、送検後に勾留請求されずに釈放される率も埼玉県内では増加した。14年の9・07%が、15年には全国平均の倍以上に当たる12・29%、16年には13・84%を記録。却下率の急上昇が、検察官の判断にも影響を与えたとみられる。

 埼玉を模範に運動は各地の弁護士会へと広がり、千葉県でも数値が向上。神奈川県弁護士会も15年に埼玉弁護士会と交流会を行った後に試験実施するなど、今回の本格導入に向けて準備を進めてきた。

 横浜地裁によると、県内の16年の勾留請求の却下率は3・89%。藤本弁護士は「裁判官や検察官は毎年全国規模で異動し入れ替わるので、継続的な取り組みが重要」と指摘する。逆の見方をすれば、「各地の運動に接して裁判官や検察官の意識が変われば、異動先でも同様の効果が見込めるのでは」と期待している。

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