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刻む2019〈7〉
台風19号

社会 | 神奈川新聞 | 2019年12月25日(水) 12:00

 記録的な豪雨が命を、暮らしを奪った。10月に来襲し、県内に深い爪痕を残した台風19号。復旧や復興はなお遠く、今も多くの人が日常を取り戻せていない。何が教訓となったのか。現場の記者も模索を続けている。

◇復興へともに模索 相模原


台風19号で斜面が崩落し、住宅が押し流された現場=10月、相模原市緑区
台風19号で斜面が崩落し、住宅が押し流された現場=10月、相模原市緑区

【写真特集】台風19号 神奈川各地の状況

 大きな被害を受けた相模原市緑区での取材は、初日から目の前の光景に圧倒された。崩れた斜面に家々が押し流され、川沿いの家や車が濁流にのまれていた。

 電気、水道、ガスの供給が絶たれ、山あいを通る道路も寸断。被害が広範囲に及んでいたため、どこから取材を始めればよいか分からず、焦った。

 「お茶でも飲んでいったらどうだ」。土砂崩れ現場の近くを歩いていると、高齢の男性から声を掛けられた。

 男性の住まいは、ガスだけは通じていた。給水車からもらってきたという水で沸かしてくれた温かいお茶がおいしかった。

 男性は不安な一夜の状況を語り始めた。大雨が降り続き、裏山から土砂混じりの水が庭に流れ込んできた時のこと。土砂崩れで道路で寸断され、買い物に行けなくなったこと。「いつ、普通の生活に戻れるのか」と深いため息をついた。

 翌日、「何が起きているのか伝えてくれてありがとう」と感謝されたが、救われたのは自分の方だった。朝から晩まで、あちこち取材して回るのではなく、腰を据えて取り組もう。取材の心構えが変わった。

 深手を負った地域の1軒1軒を訪ね歩き、被災した人々の声に耳を傾けた。斜面の崩落に住宅が巻き込まれ、夫婦が行方不明になった現場の周辺には何度も足を運び、「一刻も早く見つけてほしい」という家族の思いを記事にした。

 命を奪ったのは、土砂崩れだけではない。神之川の増水でキャンプ場を営む父親を亡くした女性とは、遺影の前で2時間ほど一緒に泣きながら話を聞かせてもらった。川べりに立地するキャンプ場の経営者が復旧に向けて開いた会合では、手作りのカレーをごちそうになりながら、新設する団体名を一緒に考えた。

 どんな情報がなくて困っているのか。取材先だけでなく、昼食を買いに入った商店でも聞くようにした。「どの道路が通れるのか」「いつ給水車が来るのか」といった生活情報に多くの人が関心を寄せていることが分かった。

 記者になりたての頃、「まず現場に行け」と先輩からよく言われた。交通事故や火事の現場に駆け付け、当時の状況を知る人を探し歩く。ようやく取材できた内容の10分の1ほどしか記事にならず、もっと効率よくできないものかと思うこともあった。

 だが今、先輩の言葉を思い出しながら、被災地を歩き続けている。まずはじっくりと話を聞くことが地元記者の役割だと思う。

 相模原市内では8人が亡くなり、3人が負傷した。市のまとめでは、土砂崩れや浸水で174棟の住宅が被災し、道路の破損箇所は499カ所に上る。

 こうした数字の裏にある人々の思いを伝え続けなければ。それこそが、復興への歩みをともにすることだと思っている。

◇原因問う住民思う 川崎

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