

青少年のインターネット対策強化に向け、県は有害サイトなどの閲覧を制限する「フィルタリング」の利用促進に乗り出す。関連法の改正に伴い、県青少年保護育成条例の改正案を県議会に提出。県内では座間市で10代の女子高校生を含む9人の遺体が発見される事件もあり、スマートフォンなどを通して青少年が犯罪に巻き込まれるケースを未然に防ぎたい考えだ。
青少年インターネット環境整備法は、事業者に対し、18歳未満が使用する携帯電話の販売にフィルタリング利用を原則義務付けている。だが近年はスマートフォンが普及し、公衆無線LANを含めネットの接続形態が多様化。青少年が制限を望まないケースも多く、フィルタリングの利用率が低迷していた。
このため、6月に公布された改正法は販売時の年齢確認やフィルタリングの説明義務に加え、端末そのものに組み込まれたフィルタリング機能を有効に設定することも義務付けた。
県の現行条例はフィルタリングを利用しない際は保護者に理由の書面提出を求めているが、改正条例案では法改正で新たに規定された端末での有効設定を行わないことについても同様に理由の提出を求める。さらに対象機器をタブレット端末などに拡大する。
普及のスマホ 家庭でルールを
スマートフォンなどを通して青少年が犯罪に巻き込まれるケースが後を絶たない。座間の事件で悪用された「ツイッター」など出会い系以外のコミュニティーサイトを契機とする青少年の犯罪被害は増加傾向。県はフィルタリング(閲覧制限)の利用強化を進めるが、課題も残している。
県警によると、1~6月にコミュニティーサイトを使って犯罪被害に遭った18歳未満は前年同期比15人減の111人。利用サイトはツイッターや「LINE(ライン)」が多い。通年で最多だった昨年は206人で、統計を取り始めた2008年の約3倍に上っている。
今年上半期の犯罪別では県青少年保護育成条例違反、児童買春、児童ポルノが99%を占める。特に県警が注意を促すのが「自撮り」だ。サイトを通じて知り合い、個別にメッセージをやりとりするうちに顔や裸の写真を自ら送ってしまうケースも。仲間や友人に写真を送信し、拡散される被害相談もあるといい、県警少年育成課は「事件化していない潜在的な被害も多い」と指摘する。
背景にあるのがスマートフォンの普及だ。県教育委員会が15年に県内公立校を対象に行った調査では、携帯電話を所有する児童・生徒のうちスマホの所有率は中学生が7割、高校生は9割に上った。一方で、フィルタリングを設定していたのは中高で4割程度。今年上半期に被害に遭った子どもに限ると約9割が設定しておらず、危険と隣り合わせのネット空間に青少年が歯止めなく接続できる現状が浮かぶ。
保護者の理解不足も深刻だ。座間の事件も念頭に黒岩祐治知事は「迅速な対応が必要」としてフィルタリングの徹底を図る狙いで改正条例案を提出。だが、保護者の同意があれば解除可能という“抜け道”は残る。
NPO情報セキュリティフォーラム(横浜市神奈川区)の湯淺墾道(はるみち)理事は「子どもの求めに応じて解除したり、自分の携帯を設定を変えないまま子どもに使わせたりするケースがある」と指摘する。
ただ、フィルタリングも万全ではない。年齢が上がるにつれて制限範囲が狭まるのが一般的だが、一部を解除できる仕組みもある。湯淺理事は「保護者が無関心でいてはならない。スマホの利用について、使える時間や利用サイトの把握など、家庭内のルールを作るべきだ」と話している。