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時代の正体〈556〉改憲議論、冷静な視点を 長谷部恭男さん×高橋源一郎さん

社会 | 神奈川新聞 | 2017年11月25日(土) 12:32

自衛隊明記の改憲案について「用心しなればいけない」と話す長谷部恭男さん
自衛隊明記の改憲案について「用心しなればいけない」と話す長谷部恭男さん

【時代の正体取材班=田崎 基】2018年1月の通常国会から安倍晋三首相主導の改憲論議が本格的に始まる。早ければ6~10月にも戦後初めて憲法改正の国民投票が行われる可能性もある。今月14日から明治学院大(横浜市戸塚区)で始まった「憲法が変わる(かもしれない)社会」と銘打った全5回の公開セミナー。初回は憲法学者の長谷部恭男さんを迎えた。ホスト役の同大学教授で作家の高橋源一郎さんは言う。「賛成、反対の前に憲法をよく知っておきたい」 

 高橋さん 憲法改正が具体的な日程に乗ってきた。これほど現実的に改憲される状態になったのは戦後初めてのこと。こうしたとき、その分野について深く徹底的に考えている人の知識を「体験」することがとても大切なことだ。

 長谷部さん 自民党の選挙公約全38ページの最後の最後に8行ほどで改正4項目が書いてあった。

 「自衛隊の明記」「教育の無償化・充実強化」「緊急事態対応」「参議院の合区解消」


(左から)自衛隊明記の改憲案について「用心しなればいけない」と話す長谷部恭男さん、高橋源一郎さん
(左から)自衛隊明記の改憲案について「用心しなればいけない」と話す長谷部恭男さん、高橋源一郎さん

 9条について安倍首相は(施行70年を迎えた憲法記念日の)5月3日に「自衛隊を憲法に書き込む」「9条1項2項はそのままにする」と言っていた。何を意図しているのか。「そんなに変わらないです」と言いたいのではないか。これは用心しなければいけない。

 例えば条文が「わが国を防衛するために自衛隊を置く」となったらどうか。

 「わが国を防衛」というからには「自衛権」が前提となる。では「自衛権」とは日本が直接攻撃を受けたときに限定される「個別的自衛権」なのか、他国を助ける「集団的自衛権」なのか分からない。また先ほどの条文例だと集団的自衛権は部分的ではなく全て行使できることになる。

 仮に「自衛隊の現状」がそのまま条文に書き込まれ、その改憲案が国民投票で否決されたとする。

 これは非常に難しい問題に直面する。主権者が自衛隊の現状を否定することになってしまうからだ。
 

9条の本質的問題


 高橋さん 憲法9条には戦争と武力を放棄すると書いてある。なぜ自衛隊は認められるのか。解釈で許される、とはどういうことか。

 長谷部さん これまで日本政府は自衛隊を「戦力ではない」と言ってきた。「戦力」とはつまり戦争遂行能力だと。


(左から)自衛隊明記の改憲案について「用心しなればいけない」と話す長谷部恭男さん、高橋源一郎さん
(左から)自衛隊明記の改憲案について「用心しなればいけない」と話す長谷部恭男さん、高橋源一郎さん

 9条1項は「戦争を放棄」「武力を行使しない」と書いてある。つまり憲法は(「戦争」と「武力行使」という形で言葉を使い分け)「戦争すること」と「武力を行使すること」は異なることだとしている。

 政府見解では個別的自衛権は戦争ではなく武力の行使であって、他国から直接攻められたときの対処は必要最小限の武力の行使であって「戦争ではない」というのが前提となっている。

 だが1項では武力そのものを放棄している。自衛権を行使する自衛隊は「戦力ではないから」と言って保持していいのか。

 これについて政府は日本国憲法が公布されたときから同じことを言っている。

 国連憲章には「自衛権は各国の固有の権利」と書いてあり憲法9条の下でも自衛権は行使できるとし、その自衛権を行使する自衛隊は合憲という理屈だ。

 ただこの説明は苦しい。自衛隊は戦力ではないのか、という疑いは残る。

 そこで法の解釈の出番となる。

 「法」は「勝手に考えるのをやめてください」というもの。法に従った方が「みんなが本来やるべきことを、よりよくできるのだ」と法は主張する。

 例えば「公園内に自動車は乗り入れてはいけない」という市の条例があったとする。

 ところが、この公園である日、急病人が出た。条例に従ったら救急車は入れない。

 法は「言う通りにしろ」という。一方で果たしてそれだけでいいのかという問題が生じたわけだ。ここで解釈が必要となる。急病人が出たら公園内であっても救急車が立ち入り、搬送していいはずだ。

 同じように9条はどう解釈すればよいのか。


高橋源一郎さん
高橋源一郎さん

 自衛隊が戦力だとすれば保持できない。だが他国が日本を直接攻めてくるかもしれない。国民の暮らしや生命が危機にさらされるかもしれない。9条に書いてあるからといって殺されるままにしておくのか。

 ここから先は見解が分かれるだろう。(無抵抗が)われわれの生きるべき道だ、という考えの方もおられるが、果たしてその考えでいいのか。
 

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